生活情報のコラム

幸せは「後ろ」にある 映画『ナポリの隣人』

(C)2016 Pepito Produzioni
(C)2016 Pepito Produzioni

 原題は“La tenerezza”-愛情や優しさ、思いやりという意味だ。引退した元弁護士の孤独な老後と、彼を取り巻く隣人、そして家族との関係を描いた静かな作品だ。なぜこの原題なのか、見終わった余韻にひたりつつ考えさせられる。静かだからこそ身に染みる、誰もが自分に置き換える手がかりが散りばめられた、名匠ジャンニ・アメリオ監督の最新作が公開されている。

 親子の関係は、子どもが成長すると変わっていく。大人になった子どもたちは、子どもの頃の記憶を大人の目で振り返る。許せないこと、理解できないこと、さまざまだ。主人公のロレンツォと法廷通訳で生計を立てる娘エレナも、かつての記憶をひきずり素直な言葉を交わせずにいる。ロレンツォは一方、隣に越してきた若い夫婦と子どもたちに、まるで家族のように心を開いていく。

 そういう父親を見る娘の気持ちは複雑だ。家族に心を開かないのになぜ、と。だが、家族には言えないけれど、他人である友人には言える、という経験は誰にでもあるだろう。家族だからこそ言葉が重くなる、他人の、ある意味“無責任な親密さ”に心が軽くなる、ということが。

 自分が働く裁判所を初めて訪ねてきた父親の姿を見ながら、エレナが詩人の言葉を引用する場面がある。「幸せは目指す場所ではなく、帰る家だ。行く先にではなく、後ろにあるのだ」と。家族主義と言われるイタリアが、その価値観の散逸に苦悩する中で絞り出したような一文だ。エレナがこの引用を口にしたのが、送還の瀬戸際にある移民の目の前であったことが、さらに今のイタリアの苦境を浮き彫りにする。だからこそ観客はもう一度、原題“テネレッツァ”の在り処を探りたくなる。

text by coco.g


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