生活情報のコラム

現代でも十分に「あり得る」ことの恐怖 映画『ちいさな独裁者』

(C)2017 - Filmgalerie 451, Alfama Films, Opus Film
(C)2017 – Filmgalerie 451, Alfama Films, Opus Film

 おかしい、と思うのに言い出せない。自分の責任ではないし、むしろ声を上げることの方がリスクを伴う。そうして沈黙した結果の集積が、巨大な悪を生み出す。公開されている映画『ちいさな独裁者』は、第二次大戦末期のドイツの実話。本編は「過去の出来事」として見ることができるが、ほんの数分映し出される“現代”のエンドロールに、観客は不安に駆られて席を立つことになる。

 所属部隊から命からがら脱走した主人公が、偶然見つけたナチ将校の制服を着て、身分を偽りつつ生き延びていく。もともとは寒さをしのぐために着た制服だが、部隊からはぐれてその場を通りかかった兵士がその制服姿を見て「大尉にお供させてください」と申し出たその言葉に、彼の中の何かが動き出したように見える。その後も、部隊からはぐれた兵士に出会う度、“親衛隊”を増やしていく彼は、偽の任務を生み出し、多くの命を奪いつつ次第に大胆になっていく。

 彼についていく兵士たちすべてが、その身分を信じていたわけではない。丈の長いズボンを見て偽物と見破る者もいたが、何も言わずに彼の蛮行に“併走”していく。作品の中で、制服が大きな役割を果たすのは「ナチ」の特殊性かもしれないが、制服に象徴される「権威」に対する人々の心模様は、現代と変わらない。

 エンドロールで、この小さな独裁者は作品を飛び出し、現代に姿を現す。ヒトラーが現代にタイムスリップして戻ってくる『帰ってきたヒトラー』(2015年、独)では、物まね芸人としてブレイクするヒトラー役の主人公が実際に街の人と話し、外国人排斥や人種差別的発言を引き出していくドキュメンタリーの部分が挟まれていたが、それを見た時の恐怖と重なるものがある。

 “ヒトラーの登場“は、決して特別なことではないのだと再認識できる作品。沈黙は時に、負の歴史の歯車になる。“その時”がきたら抵抗できるか、自問すると心もとない。

text by coco.g

 


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