生活情報のコラム

知る機会が少ない大事な話【この人に聞く!】 危機管理のプロを育てるNPO法人代表・深見真希さん(1)

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海上保安関係者のセミナーで。(一番右が深見さん。)

■何かあってからの危機管理? 
 豪雨、地震に大型台風と、2018年は日本各地で自然災害が相次いだ。被害が出た後にどう対処するかということも確かに大事だが、被害そのものを最小限にとどめることができれば、それに越したことはない。 

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IIGR創設者で代表も務める深見真希さん

 日本で一般に危機管理というと、災害や事故などの有事が発生した後にどう対応するか、ということを指すことが多いが、アメリカなどでは有事のみならず、平時からの危機管理に重点がおかれている。アメリカではどの自治体にもEmergency manager(危機管理者)という専門のポストがあり、日ごろから警察・消防・病院や自治体間で連絡を取り合い、有事に備えた研修・会議などを行っている。このアメリカ式の危機管理学を研究した学者が、実は日本にも存在する。危機管理プログラムなどを提供するシンクタンクで、NPO法人でもある「International Institute of Global Resilience」(IIGR・イイガー)を創設し、代表を務める深見真希(ふかみ・まき)さんだ。 


 
■アメリカの危機管理と日本の危機管理 
 福岡出身の深見さんが危機管理学に興味を持つようになったのは京都大学在籍時。非営利組織論を専攻していて、卒論のテーマに海の警備(海難救助)を取り上げたのがきっかけだった。各地の現場を回って実感したのは、政策と現場の人々が必要としている体制が一致していないということ。なぜこのような状況が組織の中で起きているのかに疑問を抱き、大学院では危機管理におけるアメリカの現状と政策を研究対象とした。 

  アメリカと日本で危機管理の現場を見てきた深見さんが強く感じる両国の違いは、それぞれの組織の在り方。日本では海上保安庁にしても消防にしても、「局長レベルが現場に立つことはほとんどない」(深見さん)。一方のアメリカでは、FEMA(連邦緊急事態管理庁)の元長官がボランティア消防士からのたたき上げであったことからも分かるように、トップの人間にも現場での経験を求めている。アメリカでは、現場の感覚と政策が乖離することは危険だ、という認識があるためだ。深見さんは、「政策は現場を助けるものでなくてはならないし、現場の人も政策に関わることができるよう、ある程度の理論や知識は必要」と話す。 

 ■平時からの備えが不可欠 
 
深見さんは同時に、危機管理における平時からの備えの重要性についても強調する。アメリカでも危機管理に関する国家水準が策定される以前は、各州がそれぞれの基準で災害に対応していた。しかし州をまたぐ大規模災害が発生した時、異なる基準で作業しているチーム間では即座の対応が取りづらい。また、日ごろから訓練や会議などを一緒に行い、スタッフ一人ひとりが顔なじみである場合と比べ、災害発生後に集結されたチームでは連絡・伝達に時間がかかる。さらに、一秒一秒が人命を左右する危機管理では、指揮官に瞬時の判断や対応が求められるが、これらの能力も日ごろからの訓練が必要となってくる。 

 つまり、どんな災害にもスピーディに対応するには、行政職の1ポストとして2~3年おきに人事異動が行われる危機管理官ではなく、専門職として危機管理のスペシャリストを育成する必要がある。「危機管理においては、台風・火災・事故・テロなどの災害の種類にかかわらず、平時から有事に備えるオール・フェーズ(All phase)の対応が不可欠」と深見さんは説く。        

(つづく) 

 ※【その2】では、研究を生かすために起業した経緯などについてお伝えする。 

 

 


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