生活情報のコラム

【もぐもぐ】食育への理解深める 弁当の日応援プロジェクト

会場1 2001年に香川県の小学校で始まった「弁当の日」が全国に広がりつつあります。子どもたちが保護者の手を借りずに作ったお弁当を学校で食べる取り組みです。これまで西日本を中心に約2千校で実施されています。この活動をさらに東日本にも広げようと、弁当の日など多彩な食育活動について学ぶ情報交換イベント「お料理ができたら幸せです」(主催・「弁当の日」応援プロジェクト)が6月2日、東京都内で開かれました。

 食育に関心を持つ市民ら105人が参加し、人間を幸せにする「料理」を考察した料理研究家・土井善晴さんの講演や東日本で先進的な食育に取り組む3人の報告に耳を傾け、食育への理解を深めました。

 

人を幸せにする料理の力

 

  若い頃欧州で修業した時、料理と自然との関わりの大切さを学びました。地方のレストランでは畑で手積みしたばかりの葉っぱを昼のメニューで使う。料理は自然との関わりの中でするものだという考えが身に付きました。

 帰国後、道端の山ブドウをもらって食べた時、料理人としてさらに「自然」を意識しました。ひとかじりした時、頭をガーンと殴られました。自分は何も知らなかった、という衝撃です。食材の旬や季節感など広い意味の「自然」とともに人間の暮らし、料理はあるべきで、そこに生きる喜びがあると気付きました。

 ファストフードでは、自然や季節感を感じることはできません。人工的な促成栽培の野菜は不自然です。栄養価もおいしさも自然なものに比べ半分でしょう。

 人間の半分は“自然”なんです。われわれの腸内で生きる細菌はまさに自然でしょう。半分自然のわれわれは、自然の中にいると穏やかに暮らせます。自然の中に身を置き、自然は旬の食材を料理に生かし、自然の恵みを体に取り入れることで、日々自然を取り戻している気がします。

 欧州の修行時代、親切なシェフの手書きレシピを書き写させてもらいましたが、結局、何ひとつ身に付きませんでした。料理の上達に最も必要なものは知識や技術ではありません。「食材がご機嫌だなあ」「鍋から良い音が聞こえる」など、何となくおいしそうなものができそうな雰囲気を感じ取る力が一番大事です。

 例えば北大路魯山人(陶芸家、1883~1959)。料理を勉強した人ではありませんが、われわれは「料理の達人」として知っています。インゲン豆を料理して「ええ感じにゆだっているなあ」「きれいな色やなあ」「おいしそうだなあ」というインゲン豆のきれいな瞬間、おいしい瞬間を見逃さない。魯山人はインゲン豆の“美しさ”を知っているからこそ“達人”なんです。

 このような「感覚」は言葉では説明できません。子どもの頃からの経験で養われるものです。親の料理を見たり、自ら料理して学ぶのです。子どもの頃から20歳になるまで家の料理を食べていたら、料理の大体のことは何となく分かるようになる。「大体のことが何となく分かる」ということがとても大切です。

 しかし現代のように家庭で料理を「省略」できる時代になると、このような感覚を養ったり、食事で自然を感じる機会は少なくなります。大切なものが欠落します。家庭料理は、ご飯とみそ汁、漬物で十分です。「一汁三菜」を義務に感じて、無理してたくさんおかずを作る必要はありません。一汁三菜を目標にしてしまうと「家に帰って料理する時間はない」と感じます。結局、出来合いのおかずを買って帰るようになり、料理しなくなってしまいます。

 お客さんをもてなす豪華なおかずや、見栄えの良いごちそうを作ることだけが料理ではありません。全ての人が、シンプルで簡単な料理を自分の力で料理できるようになることの方が大事です。家に帰ったら手をかけずにご飯、みそ汁をさっと作って食べる。たまに時間があれば、焼き魚や旬の食材を一品添える。それだけで立派なごちそうです。無駄をそぎ落としてこそ、まともな食が見えてくるのです。

 料理する家庭では食卓を囲んで「今日のタケノコ、アスパラガスおいしかった」「よう分かったなあ、おばあちゃんが田舎から送ってくれたんだよ」という会話もあるでしょう。「あの時食べたものはおいしかった」という味覚は、視覚や聴覚などと違い、その場に居合わせた人としか共有できません。食事がコミュニケーションや愛情の深化と関係しているのはこのためです。

 料理は自分と愛する人を幸せにします。料理には人を幸福にする根源的な力があります。料理することから愛情は始まるはずです。一汁三菜の浸透で日本人みんなが料理するようになる。これが日本人の暮らしを幸せに、健全に保つ近道の一つです。弁当の日などを通じてこれらの考えを身に付けた“新しい日本人”が出てくることを願っています。

土井善晴氏
土井善晴氏

 

料理研究家・おいしいもの研究所代表
土井善晴さん


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