生活情報のコラム

女たちの本当の痛み 『ガザの美容室』公開

『ガザの美容室』より
『ガザの美容室』より

 紛争地の女たちが、苦悩の中で生きるさま。そういう見方ももちろんできる。だがその苦悩は、“生む性”である女たちにとっては普遍的だ。その事実が、紛争地でない国にいてもこの作品を見る者の心を深くえぐる。銃を抱え、争う男たちをこの世に生み送り出したのは女自身だという、救いようのない苦悩と自嘲と。「美容室」という、紛争とは無関係の日常の場で紡がれる女たちの言葉が、止まない銃声の中で宙に浮く。映画『ガザの美容室』が公開された。

 パレスチナ自治区ガザにある小さな美容室。宗教上の理由から外ではベールをかぶらねばならない女性たちが、ベールなしで、女だけで本音を交わせる社交場だ。夫の浮気が原因で離婚調停中の中年女性は、鏡にうつる自分の老いに苛立ち、結婚を控えた花嫁は、髪をカールし紅をひく。携帯電話で恋人や夫と話し終え、ため息をつく。女たちがより美しい自分を手にいれるために集まる「美容室」という場所の空気は、銃声と爆音が響く中であることを除けば、どこも同じだ。

 だが、女性だけが入店するガザの美容室は、男たちが争い砂ぼこりが舞う外界と物理的にも精神的にも一線を画している。物語のほとんどは、美容室の中だけで進行する“ワンシチュエーション”。外が見たい、と言う少女を「出ちゃだめ」と叱りつけ、外はいいから髪を切って、と客たちは”外界”に向く意識を自ら抑えつけるが、窓のカーテン越しに見える外の諍(いさか)いは次第に勢いを増していく。女たちの苛立ちは恐怖で増幅され、ついに客同士の争いが始まる。

 「ケンカなんてやめて。それじゃ外の男たちと同じよ!」と叫ぶロシア移民の店主。カーテンが引かれた美容室の扉は、暴力と無秩序が支配する外の世界に扉を開くまいとする強い意思のメタファーのようだ。その扉を外側からこじ開ける男たち。

 混沌の中で、妊婦の陣痛が始まっている。美しく輝かしい瞬間を、破壊と殺りくの中で迎える女たちの表情には、恐怖とともに「外の男たち」への哀れみさえ浮かんでいるように見える。原題は、フランス語で悪化、荒廃を意味する「Dégradé(デグラデ)」。叩き割られたガザの美容室の“扉”は、世界中いたるところに存在しているように見える。

text by coco.g


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