生活情報のコラム

赤坂に東北の魅力発信する酒場オープン いまも息づく東北の“助け合いの精神”

新店舗「東北酒場トレジオンポート」を関係者に披露した吉田社長(左)と清水店長(右)。
新店舗「東北酒場トレジオンポート」を関係者に披露した吉田社長(左)と清水店長(右)。

 ことし2018年は明治元年(1868年)から150年。国が「日本の近代化の歩み」を祝う旗を振って祝賀ムードを盛り上げる一方で、「勝てば官軍」のいわゆる「薩長史観」への見直しも点から線に広がりつつある。“官軍”の暴挙をえぐる「反薩長本」(『明治維新という過ち』など)がそれなりに売れている。

 歴史には光もあれば影もある。明治150年の節目が、「近代化」の光にはらむ影を逆照射するなら、この種のお祭り騒ぎにも価値はあるのだろう。

 薩長史観で「同盟」といえば、龍馬斡旋の「薩長同盟」(1866年)。一方、同じ同盟でも、会津藩救済で団結した東北・北越諸藩の「奥羽越列藩同盟」(1868年)にスポットライトが当たることはない。

 小説や映画など「幕末モノ」のハイライトは決まって薩長を“ひとつ”にした龍馬の活躍。龍馬の背後にいる死の商人トーマス・グラバーやその後ろ盾・大英帝国の「影響力」は軽視され、維新回天の“手柄”は、一介の脱藩浪士・龍馬に割り当てられる。長らく薩長史観を支えてきた日本人が好む英雄譚の一つだ。

 龍馬に比べれば、奥羽越列藩同盟を呼び掛け、東北を一つにした仙台藩の知識人・大槻磐渓(おおつき・ばんけい)は脇役扱い。磐渓の父は、近代化の礎を築いた「蘭学」の大家で、江戸後期に知識人が自由に議論できる場(オランダ正月)を開いた大学者の大槻玄沢(げんたく)。また息子は近代的国語辞書の先駆け「言海(大言海)」を編纂した大槻文彦(ふみひこ)。この大槻氏三代の軌跡をたどれば、龍馬に勝るとも劣らない血湧き肉躍る日本近代化の物語を紡げそうだが、薩長史観では見向きもされない。

 「敗者に歴史なし」とはよく言ったものだ。最終的に同盟に綻びが生じた(仙台藩などが離脱)とはいえ、リスクを侵して会津藩討伐中止で団結した30を超える諸藩の平和志向、助け合いの精神は後世に語り継がれるべき価値を持っている。

 七年前の東日本大震災で世界を驚嘆させたのは、被災した東北人同士の助け合い。ニューヨークタイムズは「混乱の中での秩序と礼節、悲劇に直面しても冷静さと自己犠牲の気持ちを失わない、静かな勇敢さ、これらはまるで日本人の国民性に織り込まれている特性のようだ」と評した(2011年4月25日、日経ビジネスオンラインより)。

 この記事を書いた記者が奥羽越列藩同盟の歴史を知っていれば、その特性は東北人の中により鮮明に脈づいていることを悟ったに違いない。

 150年前に会津討伐軍が向った道を通って、2011年は多くの若者がボランティアのため東北の被災地に向った。あれから7年。このボランティア組の中から、東北の“助け合い”の精神を持ち帰り、その後の人生に活かしている若者が数多く現れている。

 東京赤坂で、東北の食材や地酒・地ビールの飲食店を展開するトレジオン株式会社の吉田慶社長(34)もそんなかつての若者の一人。6月4日に3店目の新店舗「東北酒場トレジオンポート」(東京都港区赤坂3-12-18、第8新井ビル2階)をオープンさせた。

 東北に何回も足を運んで見つけた食材を魅力的なメニューにして提供する。岩手県の一関市や陸前高田市らの行政担当者と意見交換して練り上げたイベントを店内で開催し、観光客、交流人口の増加につなげる活動など、店舗をフル活用して地道な東北支援活動を続ける。

 2018年5月30日に開かれた3店舗目となるサ新店舗のお披露目パーティーで吉田社長は緊張した面持ちで、だが決然とした口調でこうあいさつした。

 「一過性に終わらない東北支援を末永く続けたい。東北の食の魅力発信の場としてだけでなく、シティープロモーション、東北への移住定住に役立つ場、東北ファンが集う場にしていきたい」と東北愛にあふれる熱い思いを吐露した。

お披露目パーティーで振る舞われた東北特産品を使ったメニュー。
お披露目パーティーで振る舞われた東北特産品を使ったメニュー。

 3店舗目は既存店舗を上回る規模で最大100席を誇る。売上予定も最大だ。大きな期待がかかる店の店長に大抜擢されたのは清水政也さん(24)。吉田社長と同じく東北でのボンラティア経験者で、大学院を中退してこの道に飛び込んだ。「このお店から東北を盛り上げていきたい。そのためにも経営を絶対安定させる」。東北で培った不滅のボランティア精神がビジネスの根底に流れている。

 吉田社長のさらなる目標は新たな店舗の「仙台出店」。奥羽越列藩同盟の助け合いの精神を継承する若者たちの “帰還”を、大槻磐渓は草場の陰できっと待ち望んでいるはずだ。


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