生活情報のコラム

生と死、そして記憶 映画『ライオンは今夜死ぬ』

『ライオンは今夜死ぬ』メイン写真
© 2017-FILM-IN-EVOLUTION-LES PRODUCTIONS BAL THAZAR-BITTERS END

 人は記憶の生き物だ。積み重ねる記憶が“豊かさ”であり、その豊かさの種を探して未来を生きようとする。人生も終盤に差し掛かる頃、考えるのは「死」だ。「人生で一番楽しいのは70歳から80歳だ。自分が何者でもないと知り、そして待つんだ。出会いを」。死を見つめる主人公の言葉が、生き生きと「生」の意味を抉(えぐ)り出す。映画『ライオンは今夜死ぬ』は、見る者に生と死、そして記憶の意味を考えさせてくれる。

 舞台は、ヴァカンスの代名詞、太陽の色が明るい南仏コート・ダジュール。「どうすれば死を演じられる?」と悩む老俳優を演じたのは、トリュフォーやゴダールといった映画監督に可愛がられたヌーヴェル・ヴァーグの申し子、ジャン=ピエール・レオーだ。彼ははるか昔に亡くなった恋人の家を訪ね、その頃の若い彼女に出会う。記憶をたどり、話し、歌う。だが同時に、その古い家に子供たちが映画を撮ろうとやってくることで、現在と過去が交錯する。

 足取りは重く、静けさの中で記憶をたどり、一言ずつ、絞り出すように話すジャン。一方で描かれるのは、さまざまな年齢の子供たちが、この老俳優を主人公に映画を作ろうと、“秘密基地”で構想を練る姿。にぎやかな子供たちの言葉は、映画の“セリフ”ではなく、他人の話など聞かずに自分の話したいことを畳みかけるように話す、声に声が重なる子供たちの世界そのもの、あふれんばかりのエネルギーが充満する場所だ。この対極の世界が、次第に一つになっていく。

 生と死の間にある時間は、一方向にしか流れない。でも、そこにあるのは、始まりや途上、終盤ではなく、すべてを同伴した一つの「生」だという気づきが、そこここに隠れている。もちろん、それは一つの通奏低音に過ぎない。死を見つめ、考えているうちに感じる力強い生。そこに感じる意味は十人十色、だから映画は自由なのだと思わせてくれる作品だ。諏訪敦彦監督の、自由さが詰まった103分間でもある。

text by coco.g


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