生活情報のコラム

フェイクに注目が集まる時代に 映画『否定と肯定』で考える“嘘”と“真実”

© DENIAL FILM, LLC AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2016
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 トランプ米大統領が今月中旬、フェイクニュース賞を発表するらしい。「間違いが多く偏向したメディア」が受賞対象だ。逆に、側近が大統領を「まぬけ」と言っているなどと暴露した本「炎と怒り」も話題となっており、何が本当で何が嘘なのかに世界が注目している。誰もが情報の海を泳いで、個人的な判断を繰り返す時代、ホロコーストを否定する歴史家とホロコースト研究者の対決を描いた映画『否定と肯定』は、事実と解釈、そして嘘の境界線を再考する教材として出色の作品だ。

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 現代ユダヤ史とホロコーストについてアメリカの大学で教えているデボラ・リップシュタット氏が、歴史家であるイギリスのデイヴィッド・アーヴィング氏を著書の中で「ホロコースト否定論者」と呼び中傷したとして、名誉棄損で訴えられた裁判を記録した物語が原作。「歴史上の事実を裁判で争うなんて馬鹿げてる」というリップシュタットが、「ガス室は存在しなかった」という主張に反論するため、弁護団とともに原告の主張を分析する中で浮かび上がるのは、文書の一部を曲解したり、誤訳したり、記憶の曖昧さを逆手にとって、その真実性への疑念を広める手法。我々が今、さまざまな論戦を見ながらふと首を傾げる瞬間を振り返ってみると、デジャヴュな感覚は否めない。

© DENIAL FILM, LLC AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2016
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 ホロコーストがあったことを証明する―。“誰が見ても明らかな史実”を立証しなければ、その事実がなかったことにされるかもしれない、という主人公の恐怖は、歴史書や証言といった、今も私たちが得ている情報源ですら、事実を証明する確証にはならないという不安を浮き彫りにする。では、何を根拠に判断すればいいのか。

 トランプ大統領が“駆使”するツイッターを筆頭に、玉石混淆のネット情報を忌み嫌う人も多いが、旧来メディアを含め、自分が探し当てた情報だけを頼りに真偽を“判断”しなければならないのは、どの時代も同じだ。憲法学者の木村草太氏は、この作品の評で「メディアによる両論併記」の弊害を指摘する。確かに、異なる意見を平等に取り上げるのはメディアの公正性を担保するように見えるが、この裁判に即していえば、そういう併記の仕方は、ホロコーストの否認と歴史学の一般的な見解が「並び立つ重要な見解であるような錯覚を与えるだろう」と木村氏。

© DENIAL FILM, LLC AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2016
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 メディアが何を取り上げるのか、ネットの中にある膨大な情報の根拠はどこにあるのか、そしてそれらをどう読み、解釈するのか。解釈や評価と、起きた事実の境界線はどこにあるのか。永遠の課題が詰まった作品だ。

(text by coco.g)


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