生活情報のコラム

葛藤しながら成長する息子とそれを見守る母親 周囲の人々の温かさにもほっとする映画「はじまりの街」

11015250635 日常の中の見慣れた“小石”につまずいて、人生が変転していくさまを描いた『幸せのバランス』の監督、イヴァーノ・デ・マッテオ氏の新作『はじまりの街』が、東京・岩波ホールで封切られた。DVから逃れて、息子と二人で始めた新しい生活を取り巻く出来事を描いた作品。正面から見れば、厳しい社会の中で生き抜く“弱者“を、彼らに寄り添う優しい視線で描いた作品だ。だが母親の視線で見ると、広がっていく息子の世界に寄り添い、何があっても守り抜く強い母親の姿、その「見えない強さ」が見えてくる作品でもある。

 DVから逃れて、または離婚や別居、単なる転勤であっても、住み慣れた町を離れることで生まれるストレスは大きい。だが、子供たちにとってそれが理不尽なのは、原因が「大人の都合」ということだ。子供にとっては、今いる学校や、今そばにいる友達が世界のすべて。それを突然奪われる衝撃は、大人が想像する以上だ。この作品の冒頭でも、住み慣れたローマの街で、友人とサッカーの話をしながら楽しそうに下校する13歳の少年ヴァレリオの姿は、その直後にやってくる母子のトリノへの“脱出”で少年が失ってしまう、温かく心地よい子供の世界の表象だ。

 新しい学校でなかなか友達ができないことも、淡い初恋がたどる残酷な結末も、ヴァレリオにとって、すべてはローマを離れトリノに移り住んだことが原因のように見える。だが、人の輪を広げ、新しい世界に踏み出していく、子供から大人の世界に渡っていく橋の上で、実は誰もがさまざまな形で歩く道でもある。ヴァレリオにとっては、そのきっかけの一つが母親が受けたDVとそれに伴う引っ越し。父親と仲良くサッカーボールを蹴るほかの家族を、うらやましげに眺める姿には胸が痛むが、その痛みの代償として彼が受け取るのは、近所のカフェレストランを営む訳ありの元サッカー選手とのふれあいだ。フランス語をボソボソと話す彼は、やはりトリノの”異邦人”。父親ほどの年齢の彼とあっという間に打ち解けるのは、ヴァレリオが異邦人として“心の傷”を抱えて生きることの意味を知ったからかもしれず、そこにヴァレリオ自身の成長を見ることもできる。

 一方で、葛藤するヴァレリオを、自身も葛藤しながら見守る母親アンナの心の揺れ方は、息子を持つ母親であればほぼ誰もが身につまされる心情だ。「親」とはいえ、完璧な人間などいるわけはなく、自分の落ち度が原因で、子供に害が及ぶかもしれないと考えた時の恐怖と、なりふり構わず子供を救おうとする一種の強さ。そこに脇からそっと手を差し伸べる周囲の人々の温かさに、ほっとできるのもこの作品の素晴らしさだ。


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