生活情報のコラム

世界へ飛び立つ“翼” 雌伏時代を支える支援

【記念撮影する2017年度「上月スポーツ賞」の受賞者】
【記念撮影する2017年度「上月スポーツ賞」の受賞者】

 映画『時をかける少女』で「桃栗3年、柿8年…」と始まる挿入歌「愛のためいき」。柿8年~に続いて主演の原田知世さんが「柚子は9年でなりさがる、梨のばかめが18年」とユニークな歌詞を口ずさむ。時代は角川映画全盛の1983年。メディアミックスを仕掛ける時代の寵児・角川春樹氏と鬼才・大林宣彦監督がタッグを組み、透明感あふれる当時15歳の原田さんを本作で一躍スターダムに押し上げた。

 冒頭のいわゆる「桃栗3年、柿8年」は、何事も成就するまではそれなりの年月を要するという戒めと忍耐の言葉。元広島カープの男気・黒田博樹投手が座右の銘に挙げた「耐雪梅花麗」(雪に耐えて梅花麗し)とも相通ずる。厳しい冬を耐え忍んだ梅だからこそ春に麗しい花を咲かせる――という意味だ。

 目立たない選手だった黒田氏がヤンキース投手陣の主軸を担うまでに至った氏の人生行路がこの言葉に刻まれている。カープは黒田氏の背番号15を永久欠番にした。鉄人・衣笠祥雄氏の「3」、ミスター赤ヘル・山本浩二氏の「8」に続く。

 先達の「3」「8」は「桃栗柿」の年数と奇しくも同じ。「桃栗柿」と黒田氏の「梅」にはやはり“縁が”ある。栄冠を手にした鉄人、ミスター、男気はみな厳しい“雌伏の時”を過ごしてきたのだ。

 そんな雌伏の時のど真ん中に現在いる若手アスリートの支援を長年続けているのが「上月財団」(東京、理事長・上月景正コナミホールディングス代表取締役会長)が2002年から始めた「スポーツ選手支援事業」だ。遠征費など活動資金の捻出に苦労する中で世界を目指す小学生から大学生までのアスリートに、1人年間60万円を毎年助成している。

 今年で16回目を迎え、これまでに延べ900人を超えるアスリートに助成した実績がある。今年は水泳や体操、柔道、スキー、スケート、陸上、バレーボール、卓球、テニス、バドミントン、フェンシング、ゴルフ、スポーツクライミング、馬術の選手74人に助成した。

 現在絶好調の広島カープも発足当初は資金難に苦しんだ。原爆で愛する家族を失った多くの広島市民にとってカープ誕生は戦後の希望の光だった。原爆のむごたらしさを世界に訴える名作「はだしのゲン」で知られる漫画家中沢啓治さんの「広島カープ誕生物語」 には、発足当初の球団を一生懸命、「たる募金」で支える広島市民の熱い姿が描かれている。

 カープ同様、アスリートもまた、日の目をみない時代のさまざまな支援を“翼”に「世界」に飛躍していく。

【緊張した面持ちで東尾専務理事から認定書を受け取る井上選手(右)=東京都港区のザ・リッツ・カールトン東京】
【緊張した面持ちで東尾専務理事から認定書を受け取る井上選手(右)=東京都港区のザ・リッツ・カールトン東京】

 東京都内で9月6日開かれた「上月スポーツ選手支援事業」認定式では、上月財団の東尾公彦専務理事が、支援対象に選ばれた明日の飛躍を目指す各選手に支援を約束する認定書を手渡した。東尾氏は「将来ある若い選手が練習に打ち込んでいただけるよう支援したい」とあいさつした。選手を代表して水泳の溝畑樹蘭選手(明治大1年)が「2020年に向けて努力を続けていきます」と活躍を誓った。

 緊張した面持ちで認定書を受け取った神奈川県綾瀬市立城山中学1年の井上聖也選手は2歳から体操を始めた。「得意種目は吊り輪。技がピタッと決まった時は気持ちが良い。オリンピック選手になることが夢。憧れの選手は内村航平さんです」と目を輝かせながら未来を語る。

 上月財団の村田哲也事務局長(理事)は「もう少しでトップレベルに届くものの支援が少なく孤軍奮闘している選手の力に少しでもなれればと思う。支援選手の中から2020年の東京オリンピックで活躍する選手が出てくれればうれしい」と話す。

 会場では認定式と同時にオリンピックや世界選手権など世界で活躍した選手34人に贈る「上月スポーツ賞」の表彰式も併せて開かれ、体操の白井健三選手やスケートの宮原知子選手、卓球の石川佳純選手、柔道のウルフアロン選手、水泳の瀬戸大也選手らに表彰状が手渡された。

【「たくさんの人に支えられている。自分の夢は自分だけのものではない」と書かれた塚田真希選手(柔道)の寄せ書きを紹介する上月財団の村田事務局長】
【「たくさんの人に支えられている。自分の夢は自分だけのものではない」と書かれた塚田真希選手(柔道)の寄せ書きを紹介する上月財団の村田事務局長】

 この日の支援選手の中から、明日のオリンピック選手が生まれ、「上月スポーツ賞」も受賞していくに違いない。学生服姿が初々しい支援選手は、会場で目の前に座る白井選手ら世界トップ選手の勇姿を見て、きっと決意を新たにしたはずだ。「次はおれ、わたし」と。

 「桃栗3年、柿8年」そして「雪に耐えて梅花麗し」なのだから…。


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