生活情報のコラム

新連載【こんな夜にはクラシックギター】 こんなに素晴らしい音楽ジャンルなのにマイナーな理由とは?

28144003209 「クラシックギター」と聞いてあなたは何を思い浮かべるだろうか? 音楽には特に興味のない人が「ギター」と聞いて連想するのは、おそらくはロックとかフォークなどのポピュラー音楽がほとんど。クラシック音楽のイメージにはまず結びつかないだろうし、日常的にコンサートに行ったりCDを聴いたりして「クラシック音楽ファン」を自任する人々にとっても、「クラシックギター」(という楽器及びその音楽)は、なかなかにビミョーなジャンルであるようだ。

 一口に「クラシック音楽」といっても、オペラからオーケストラ、室内楽、器楽曲、声楽曲などいろいろな分野があり、ギターはそのうちの「器楽」の一部ではあるのだが、いささかマイナーな存在であろう。その理由として考えられるものをいくつか挙げてみる。

 ①ギターは「オーケストラを構成する楽器」には含まれない。

 ――オーケストラとは、いわば「楽曲を演奏して音楽を表現するための、さまざまな音色と音域を持つ旋律楽器の集合体」であり、たしかにギターはオーケストラ楽器ではないのだが、ギターは(小規模ではあるが)音楽の3要素たるリズム・メロディー・ハーモニーを一台でこなせてしまう楽器なので、逆にオーケストラに入る必要がないともいえるのだ。

 一説によるとベートーベンが「ギターは小さなオーケストラである」と言ったというほど、単独で多彩な音色の変化と音楽表現ができる楽器なのである。

(Ph2) ベートーベン
(Ph2) ベートーベン

 ②いわゆる有名作曲家のほとんどはギターのための曲を書いておらず、逆にギター曲を書いた作曲家のほとんどは一般的にはよく知られていない。

 ――しかしながら、前述のベートーベンの他にも、有名作曲家がギターについての賛辞を述べているので、いくつかをご紹介したい。

・シューベルト「ギターは素晴らしい楽器であるが、その素晴らしさを理解している人は少ない」(一説には、シューベルトは貧しくてピアノが買えず、ギターで作曲していたという。また彼は、現在はチェロで演奏されることが多い「アルペジョーネ・ソナタ」という名曲を残しているが、現在は消滅してしまったこのアルペジョーネという楽器はギターと同じく6本の弦とフレットを持ち調弦もギターと同じだったので、いわばギターをチェロのように構えて弓で弾いていたようなものだったわけで、このことからもシューベルトがギターに精通していたことが推測される)。

・パガニーニ「ギターの和音がたまらなく好きだ」(バイオリンの鬼才として知られるパガニーニだが実はギター奏者としても一流で、ギターがらみの曲も100曲以上作曲していることはほとんど知られていないようだ)。

・ショパン「すぐれたギターほど美しいものは他に考えられない」(しかし彼はギター曲を書いていないのが残念だが・・・)。

・ファリャ「ギターは和音と多音の点で、最も豊かな楽器である」(ファリャは一曲だけだがオリジナルのギター曲「ドビュッシーの墓碑銘のための讃歌」を書いている)。

以上のような大作曲家たちもギターを好んでいたわりには、一部の例外を除いて作曲をしなかったのは、楽器を熟知していないと作曲しづらい(=演奏不能な曲を書いてしまう)という特性があるためだと思われる。

③楽器の音量が小さいというハンディキャップがあり、大ホールでの演奏に向いていない

 ――クラシックギターではその繊細な音色も魅力の一つであるため、通常はマイクなどで音量を増幅しないのだが、音量が小さいことについては、ストラヴィンスキーが「ギターは音が小さいのではなく、遠くで鳴っているのだ」という名言を残している。

 また最近では楽器の表面板を2枚貼り合わせる「ダブルトップ」という手法など、音量増大についての楽器改良も成されるようになってきており、その意味では現在も進化が続いている楽器でもある。

 そしてギターは演奏形態も独奏、ギター同士の重奏や合奏の他に、旋律楽器(バイオリン、チェロ、フルートなど)とのアンサンブルや歌の伴奏、ギターの加わった室内楽やギター協奏曲もあるように多彩である。ピアノと違ってどこにでも持ち運びができ、演奏者が自分で調弦するので調律師もいらない。

 レパートリーも、オリジナル曲は少ないものの現在も新曲が生み出されている一方で、バッハから映画音楽まで、さまざまな編曲作品にも新たな可能性が秘められてもいる。そして歴史のある専門誌(月刊「現代ギター」=今年2017年が創刊50周年)がある数少ない楽器でもある。

 月刊「現代ギター」2017年2月号
月刊「現代ギター」2017年2月号

 以上のような楽器の魅力ゆえか、ギター音楽は一般のクラシック音楽ファンとはまた別の、少数だが根強いファン層に支えられているといえるが、しかしそれは双方のファンにとって“もったいない”状況ではないかともずっと思ってきた。

 これから、知っているようで知らないクラシックギターという楽器とその演奏、演奏家、作曲家と作品、ギター音楽にまつわるあれこれなどをご紹介していくコラムの連載を始めるにあたり、双方のファンの垣根を低くする一助となり、またクラシックギターに新たな興味を持っていただけるものになれば幸いと思うしだいである。

 

 

宮林淳

Jun Miyabayashi

1956年東京生まれ。1978年上智大学卒業後、現在に至るまで音楽とは無関係のメーカー勤務の傍らコンサート通いを続け、1980年代からクラシックギター専門誌「現代ギター」に記事を執筆の他、ギター関連のCDのライナーノートやコンサートのプログラム解説なども手掛ける。 “日本一ギターのコンサートを聴いている男”を標榜してギターと音楽をこよなく愛し、2014年秋には、スペインのリナレスで開催された「第21回アンドレス・セゴビア国際ギターコンクール」のゲスト審査員も務めた。カーマニア、プロレスマニアでもある。


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