議員を辞めて議員になる怪

 先月19日、衆院本会議において、れいわ新選組代表の山本太郎氏の議員辞職が認められ、同党の櫛渕万里氏が比例東京ブロックで繰り上げ当選となった。山本氏は「政治の暴走を食い止めるため」と力説し、今年夏の参院選に出馬するという。たが、昨年10月の衆院選からわずか半年で、国会議員を辞して国会議員を目指すことに批判が噴出している。

 もともとれいわ新選組は山本氏の高い知名度によって票を集めてきた。今回の衆院議員辞職・参院選出馬も、両院における党の議席の上積みを図るため、制度を巧みに利用しているとの見方が強い。もっとも、制度の趣旨に反しているといった厳しい批判はあっても、違法でないことは確かである。

 似たような例は、2年半前にもあった。参院選で議席を得たばかりであったにもかかわらず、また、たとえ当選しても前任者の残存任期しか務められないにもかかわらず、NHKから国民を守る党(当時)の立花孝志党首が「国会議員は一旦辞めるが、必ず戻ってくる」と豪語して議員辞職し、参院埼玉選挙区の補欠選挙に名乗りを上げた。このときも同党の浜田聡氏が繰り上げ当選した。

 ミニ政党に限らず、大政党においても、国会議員を辞して国政選挙に挑む者は珍しくない。最も多い例は参院から衆院への鞍替えである。「同じ国会議員でもバッジの台座が赤紫色(衆院)か、紺色(参院)かで歴然とした差がある。権力に近づくには、やはり衆院にいなければならない」(自民党中堅議員)のだという。

 最近では、林芳正氏の鞍替えの例がある。林氏は参院当選5回のベテラン議員であったが、昨年8月に議員を辞職し、10月の衆院選で当選を果たした。その結果、すぐに外相に抜擢され、いずれは総理総裁の椅子を争う一人に数えられている。参院自民党の幹事長を務める世耕弘成氏の鞍替えの憶測も後を絶たない。

 百歩譲れば、有権者が納得する限り、参院から衆院への鞍替えは許されるかもしれない。しかし、問題は議員を辞しながら、再び同じ色の議員バッジを付けようとする“怪”である。「比例区は不安定だから選挙区に根っこを張りたい」(自民党ベテラン議員)といった理由があるようであるが、しっくりこない国民は多い。

 林氏の議員辞職に伴って実施された参院山口補選では、自民党の北村経夫氏が当選したが、比例区選出の参院議員からの鞍替えであった。先月の参院石川補選でも、宮本周司氏が比例区から鞍替えした。「補選では現職議員のほうが有利に戦える」(自民党選対関係者)との理由であるが、国民としてはやはり納得しづらい。

 衆院でも同様の現象が起きてきた。小選挙区選出の議員が死去すると、惜敗で比例復活を果たして議員バッジを付けた者がいったん議員を辞職し、その選挙区の補選に出馬することがある。形式上は議員を辞めているが、補選での当選を見越し、議員会館や議員宿舎の部屋をそのまま使うこともあるという。

 こうした鞍替え、とりわけ同じ院の中での鞍替えが行われているため、同じ議員バッジでも「金バッジ」「銀バッジ」「銅バッジ」といった“序列”に拍車がかかっている。しかし、国会議員は等しく「全国民を代表」しているはずであり、問われるのは選出方法ではなく、むしろ仕事力でなければならない。そのためにも、議員を辞めて議員になることの是非を真剣に考える必要がある。

 いわゆる政治改革からすでに四半世紀以上が過ぎた。衆院の一票の格差是正のための「10増10減」にあたふたするのではなく、国民の政治への信頼を高めるため、そろそろ現行の選挙制度の歪みや隙間を抜本的に是正・改善するときである。だが、耳を澄ましても、永田町からそうした声は聞こえてこない。

【筆者略歴】

 本田雅俊(ほんだ・まさとし) 政治行政アナリスト・金城大学客員教授。1967年富山県生まれ。内閣官房副長官秘書などを経て、慶大院修了(法学博士)。武蔵野女子大助教授、米ジョージタウン大客員准教授、政策研究大学院大准教授などを経て現職。主な著書に「総理の辞め方」「元総理の晩節」「現代日本の政治と行政」など。

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