2チャンネルの登場で「モノの作り方が変わった」

 ガンダム好きの中央大学国際情報学部の岡嶋裕史教授は、今年1月に角川書店からマニアックな著書「ジオン軍の失敗」と「ジオン軍の遺産」を出版した。編集を担当した角川出版の松坂豊明さんと制作秘話を語った。5回続きの最終回。

対談(1):ガノタの岡嶋教授、新著の裏話を編集者と語り尽くす

対談(2):“異世界もの”コンテンツは日常系?

対談(3):「ジオン軍の失敗」「ジオン軍の遺産」の続編はあるか?

対談(4):ガンダム40周年、最も変わったのはキャラクターの愛し方

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 岡嶋 前回おっしゃっていた、「ストーリーよりもシーン、シーンよりもキャラクター」というキーフレーズは、今後のクリエイティブを規定していくかもしれないですね。2ちゃんねるが登場したときに、多くのクリエイターさんが「モノの作り方が変わった」と言っていました。

 松坂 あれは大きな変化でした。

 岡嶋 それまで割と好き勝手に作っていましたからね。視聴者や読者の声が返ってくるにしろ、間接的でしたし、時間差もあった。それがリアルタイムに可視化されるようになれば、どうしても気になったり、それに引きずられるのは自然な流れかと思います。

 松坂 岡嶋さんの分野でも気になりますか?

 岡嶋 アニメやラノベの作り手さんよりはずっと間接的で、ぬるい条件で仕事をさせていただいていますが、例えば資格試験の対策書籍のようなものでも、「この説明の仕方じゃ分からないよ」と書き込みがあればへこみますし、対応もしないといけません。

 松坂 修正するわけですね。

 岡嶋 指摘のあったところは直します。でもそうしていくと、なんだかパッチワークみたいになってきて、最初にあった全体の流れが崩れていくんです。個別の記述は精度が上がっていっても、全体としてはテンポが悪くなったり、ぼやけたり。コンテンツの種類が違いますが、こうした作業を物語でやるのは本当に大変だろうと思います。

 松坂 修正をしていくことで、創作に当たっても違った変化が起こったと?

 岡嶋 延長線上のお話かもしれないですよね。2ちゃんねるの機能ってツイッターに吸収されていったと思います。その中でも重要な役割が、メディア上で起こる出来事を増幅して伝播させることです。ここで大きな波を作らないと多くの人を動員できない構造になっているので、ツイッターで取り上げてもらいやすい作りにしないといけません。

 松坂 そうすると、どうしてもいいシーンを作ることになりますね。

 岡嶋 全体を語ってもらうのは難しいメディアですから。いいシーンを先に設計して、物語はシーンとシーンを接続する接着剤としての機能が優先されます。そういう作り方はどうしても無理が生じてつじつまが合わない箇所が出てきますが、それを気にする人は減っていると思います。

 松坂 確かにそうかもしれません。いいシーンが配置されている方が重要です。

 岡嶋 作り手にとっても、割と都合がいいんです。先に言ったように、今はどうしても「パッチワーク的な作り方」を求められます。その場合、全体像はいびつになりがちですが、いいシーンを置くことはできますから。

 松坂 各種環境の相乗効果でそうなっているんですね。シーンよりもキャラクターに関しても同じことが言えますか?

 岡嶋 制作環境と消費環境からの要請であることは間違いないと思います。デジタルツールやデータベースが整備されて、2次創作が容易になるとみんな好きな物語をつむぐようになります。中にはオリジナルよりも人気を持つ2次創作も出てくる。そのこと自体は100年も前から予言されていましたが、「じゃあその作品の軸は何なの?」と言ったときに残るのはキャラクターですよね。だから、物語よりもキャラクターが力を持つのは現代では必然なんだと思います。それをビジネスとして誰よりも先に体系化した御社はすごいなと。

 松坂 でも、そんな中でガンダムはちゃんと物語が消費されている作品だと思いますよ。キャラに頼りすぎていないですね。

 岡嶋 それは感じます。ファンにも恵まれていますね。そんな作品に末席部分で関わらせていただいてうれしいです。今後も作り手さんの創造力を刺激し続ける作品であってほしいです。

 松坂 元気のいい書き手さんがどんどん出ていますよ。大丈夫です。

【対談者略歴】

 松坂 豊明(まつざか とよあき) 「電撃B-magazine」「アニマガ」(メディアワークス)、「メガミマガジン」(学研)、「娘タイプ」(KADOKAWA)などの雑誌編集者を経て、現部署に。アニメの関連書籍などを手掛ける。

 岡嶋 裕史(おかじま ゆうし) 中央大学国際情報学部教授/学部長補佐。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「思考からの逃走」(日本経済新聞出版)、「インターネットというリアル」(ミネルヴァ書房)など。

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