ガンダム40周年、最も変わったのはキャラクターの愛し方

 ガンダム好きの中央大学国際情報学部の岡嶋裕史教授は、今年1月に角川書店からマニアックな著書「ジオン軍の失敗」と「ジオン軍の遺産」を出版した。編集を担当した角川出版の松坂豊明さんと制作秘話を語った。5回続きの4。

対談(1):ガノタの岡嶋教授、新著の裏話を編集者と語り尽くす

対談(2):“異世界もの”コンテンツは日常系?

対談(3):「ジオン軍の失敗」「ジオン軍の遺産」の続編はあるか?

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 松坂 ガンダムももう40周年を迎えました。何か思うところはありますか?

 岡嶋 どんなコンテンツでもそうですが、その時々の社会に寄り添って作られてきたんだなと思います。従来型の価値観がほどけていく過渡期に産声を上げた作品ですから、アムロにしても素直に立身出世指向があるようなキャラクターではなかったですけれども、それでも成長譚としてきちんと成立していました。それが後期の作品になってくると成長を拒否したり、主人公が打ちのめされて終幕を迎えるような場面も出てきます。物語の構造ひとつとっても、40年前とはまったく違っています。

 松坂 岡嶋さんの好きな二次元女子も?(笑)

 岡嶋 「二次元女子にしか興味がない」ってあちこちで言い過ぎたなと思っていて(笑)。高校に模擬授業に行くと、明らかに生徒さんたちが引いています。まあ、事実だからしかたないですけど。

 富野先生の作品ですから、特に小説版などは女性原理を考察するような場面もありますよね。40年前でも、「単に守られているだけが役割の少女」などは極力廃されていましたし。性的な踏み込みも容赦がなくて、いま思えばヒロインの娼婦率が高いですよね。ララァとかギギとか。書けませんけれども、「宇宙いっぱいに広がる○○○○」なんて表現を他で見たことがありません。

 アニメになるとどうしてもその辺は希釈されてしまうので、「小説はちょっと…」と考えている方にも一度は手に取っていただきたいと思っています。激しい戦闘の背後で別の物語が進行しているかもしれません。

 松坂 小説って作家さんの本音が一番ぽろっと出やすいところかもしれないです。

 岡嶋 そうですよね。長いのが苦手な方は、「密会」だけでもご一読いただくと、ララァ観やニュータイプ観が変わるかもしれません。

 松坂 キャラの分析はしないんですか?

 岡嶋 情報社会論みたいな授業を持たせていただくとやりますが、公刊はしないですね。たぶん、ファンが一番大切にしている部分だと思うんです。モビルスーツももちろんそうですけど、あれはまだ工業製品だから異論を許容できる余地があって。でも、よくわかんない人が土足で踏み込んできてキャラの解釈とか始めたら嫌じゃないですか。

 キャラクターの愛し方って、ここ40年で一番変わった部分で、個人主義の浸透を受けて「それぞれの解釈で、それぞれに愛していい」となったのが現在です。同人文化の隆盛もそれを裏付けていると思います。だから、あんまり評論じみたことをしちゃいけないのかなと。

 あと、ぼくはあんまり仮想と現実を交えて話したくないんです。自著「ジオン軍の失敗」「ジオン軍の遺産」でも、「この企業は現実の世界ではトヨタみたいな立ち位置で~」といった解説は入れていません。冷めちゃうんです。ファンタジーはファンタジーで楽しみたいと思っています。

 キャラの評論を始めると、どうしても現実に引き付けて考察する必要がでてきちゃうので、その意味でもやらないですね。

 ぼく、御社の慧眼が本当にすごいと思っているんです。最初期に「キャラクター局」を設置した企業ではないでしょうか。コンテンツビジネスの中心って明らかにキャラクターにシフトしましたけれども、多くの出版社はいまだに「学芸」や「文芸」といった区切りでビジネスをしています。キャラクターを中心にビジネスを組んでいくと決断した先駆けですよね。コンテンツビジネスで同業他社を大きく引き離しているのも当然かと思います。

 松坂 決めたときにそこまで考えていたかはわかりませんが、ストーリーよりもシーン、シーンよりもキャラクターという流れはありますね。

 岡嶋 すごく興味があるところです。では、次回はそこをじっくり伺いたいと思います(笑)

【対談者略歴】

 松坂 豊明(まつざか とよあき) 「電撃B-magazine」「アニマガ」(メディアワークス)、「メガミマガジン」(学研)、「娘タイプ」(KADOKAWA)などの雑誌編集者を経て、現部署に。アニメの関連書籍などを手掛ける。

 岡嶋 裕史(おかじま ゆうし) 中央大学国際情報学部教授/学部長補佐。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「思考からの逃走」(日本経済新聞出版)、「インターネットというリアル」(ミネルヴァ書房)など。

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