【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】誕生日と記念日

2021年10月24日=931
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算


▽誕生日の復権

9月のとある日、わが誕生日を迎えることができた。齢(よわい)58歳。58回プラス1回目の記念日である。

プラス1回目の「1」とはまさに誕生の日であり、ゼロ歳の誕生日だ。両親はもちろん恐らく周りの多くから祝福され特別な誕生日だったことだろう。

そして結婚当初はお互い気合を入れて祝っていた、それぞれの誕生日。それも特別だった。しかし、年がたつにつれてだんだんと縮小傾向となっていた。いまは「おめでとぉ~」とは言葉をかけるぐらいだ。多くの夫婦がそうではなかろうか。とお察しする。

しかし2018年6月にがんを発病してからは、誕生日が特別な一日に復権した。自らが実体験できるこれがもう最後の誕生日となるかもと覚悟するからだ。

2018年、19年、20年そして今年2021年の9月を迎えられた。本当にありがたきことで、とってもうれしい。

先月には身内はもとより友人からもメッセージをちょうだいできた。披露させてください、引用です。(一部改変あり)

「あなたは、みんなの希望です。これからも照らし続けてください」

「私もしぶとく生きていく」

「どんどん足し算命を増やしていきましょう~たまると利子もつきますねぇ」

「○○で涙が止まりません」(○○の2文字は想像にお任せします)

「生きとってくれるだけでもう十分うれしいよ、おってくれるだけでええんや」

身に沁みわたります、身内だけに。あかさん(※編注:奥様のあかねさんのこと)、ありがとう。

▽近い目標は心地いい

今となっては1年後はおろか半年後でさえも生(せい)の自信が持てない。ちょうど昨年の同じ時期、この私のように話もできメールやフェイスブックでつながっていた同士の何人かがすでに旅立っていることも、この状況に追い打ちをかける。

しかしひとは目標がなくなると生きづらくなる生き物だ。先の見通しは立たない。1~3カ月先がせいぜいだ。そのあたりに目標を定めて生きている、しぶとく。

ただし遠すぎる目標はもはや達成からはほど遠い、夢のまた夢となってしまう。だから近い目標となる。近ければ近いほどいい、心地いい。

▽金婚式はリモートで

今年2021年にいわゆる30周年を迎えたわれわれ夫婦の、次なる節目は金婚式か。ただし悲しいか、この日を生きて祝えることは決してないと私は腹をくくっている。がんさえなければ、ふたりで祝えたのに・・・

ならば、あちらとこちらの世でリモート祝賀会でも開こうか。もしかするとそのころは可能となっているかもしれないから、それも楽しみやな。

しかしここですかさずわが友が言った。
「50周年までに離婚しとるかも知れへんよな、たとえおまえが生きとっても」
「・・・・・」

(発信中、フェイスブックおよびYоuTube“足し算命520”


おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)、2021年10月「緩和ケア医 がんと生きる40の言葉」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。


このコーナーではがんと闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。

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