「(大手)銀行のシステムトラブルの背景」

 

 大手銀行のシステムトラブルが、利用者らに不安を与えている模様だ。詳細は不明ながら、監督当局がシステムを実質管理する報道もみられている。バブル崩壊以降、多くの銀行が再編を余儀なくされる中で、今なお出身銀行による格差や風通しの悪さが残ると指摘する記事は多く、断続的に発生するトラブルの主要因とするものもみられる。

 そうした情緒的な面も否定はしないが、筆者自身は、より多くの要因が相互に相関し合う複雑に絡み合った実情の下で不幸なトラブルに至ったものだと推察している。本稿では、最近の銀行が抱えるシステム運用上の課題のうち3種をごく簡単に紹介し、もってトラブルの背景をご理解いただく一助としたい[図表1]。

 

 銀行のメインシステム(「メインフレーム」と呼ぶこともある)は、1960年代の開発・初導入以降に大きな更改(=入れ換え)を3度実施している。現在のシステムは、1990年代半ばから稼働させている「ポスト第三次オンラインシステム」と呼ばれるものだが、運用開始から既に30年近くが経過し、さまざまな軋みが生じている。

 金融政策に直結する銀行への規制は、各国国内のみならず国を跨いだ形で実施されることも多く、実態として、銀行側には毎年のように法制変更が通知される。典型的な許認可業種である銀行には、これらへの拒否権はなく、その都度システムの導入や更新を余儀なくされている[図表2]。

 

 法制変更や商品・サービス改定にあたり、銀行は、メインシステムの仕様変更だけではなく、独立した新規システムの導入・連係によって処理しようともする。生活様式が変わったため古い冷凍冷蔵庫の使い勝手が悪くなったものの、買い換えや仕様変更をせずに新たに専用野菜庫を導入して並行使用するようなイメージだろうか。図表2の右欄に記したシステムは、いずれも、その「新たなシステム」に他ならない。

 一方、ローンを普通預金口座から回収するように銀行の勘定は相互に相関しており、その裏付けとして、システム内のデータがやり取りされている。よって新規システムの導入や仕様変更時にも、他の稼働中のシステムとの間でデータが正確にやり取りされなければ、事務処理が担保できない。実態としては、古いシステムにあまたの別のシステムを何とかつなぎ合わせている運用がみられる。これらが①だ。

 世帯の実生活や事業者の事業活動に直結する銀行の取引顧客は膨大であり、各顧客が各々のニーズに応じて店頭・ATM・携帯端末などで四六時中データを動かし続けている。システムの導入や更新は、そんな実情下での実施を余儀なくされるため、接続やテストにかけられる時間やデータ量は必ずしも十分ではない。

 

銀行のみならず他業態に開放されているATM(筆者撮影)

 

 商店などが棚卸しや内装工事などのため臨時休業することは珍しくないが、銀行の営業日や営業時間は法定され、無条件で休業判断はできない。異なる銀行間でも、内国為替を通じて相互の資金を決済しているほか、そのネットワークが他業態にも開放されており、休止時の影響が甚大なためだ。[写真]

 大型連休や年末年始時などに、銀行のシステム停止を通知するテレビCMがみられるが、それ以外の週末などにも、各行でシステムのメインテナンスや更新が年単位の計画に沿って順次実施されている。それでも、システム数が増えて複雑化した分だけ管理負担はかさみ、時間は総じて足りない。交通量の多い橋の補修・架替え・追加造成に追われるものの、道路を封鎖せずに一部を開放しなければならないため、工事にかなりの制約がもたらされるような状態だろうか。これらが②だ。

 銀行のシステムは、銀行がコンピューターシステム事業者(以下「システム会社」)にシステム開発と維持管理を発注し、それが納品・サービス提供される中、実質的に一体で運用されている。高額な費用が投じられ続け、外注先などを含む事業者や従事者も膨大だ。原発事故の際に“電力ムラ”の存在が指摘されていたが、銀行にも“システムムラ”が形成されている。

 誤解を怖れずに言えば、こうした中で、ときに全体最適とは異なる意思決定に引きずり込まれる実情もみられる。システムの構造が複雑で手が掛かる方が都合の良い人たちが、システム会社などの外部だけではなく、銀行内部にも居る。これらが③だ。

 システム安定化には、もつれ合うこれらの要因をひもとく必要がある。それを見つめる顧客側の視線は、既に厳しい。

 

(オペレーショナル・デザイナー[沼津信用金庫 参与] 佐々木 城夛)

 

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