代議士たちの金・銀・銅

 10月21日に衆院議員の任期が満了するため、この2、3カ月のうちに必ず総選挙が行われる。早いもので、現在の小選挙区比例代表並立制が採用されてから25年がたち、次期衆院選はちょうど10回目を数える。投票所で1枚目の投票用紙に小選挙区選挙の候補者名を、そして2枚目の用紙に比例代表選挙の政党名を記すことは、今や誰でも知っている。

 国政でも地方でも、議員は胸にバッジを付けているが、「金バッジ」といえば国会議員のものを指す場合が多い。衆院議員ならば直径2センチほどの赤紫色のビロードの上に、菊花の金の紋章が輝く。議員の記章であるため非売品ではあるが、紛失した場合などは1個あたり1万5000円で購入できるという。

 現在の選挙制度が導入されてからしばらくは、同じ議員バッジでも、小選挙区で当選した者は“金バッジ”、比例代表選挙で当選した者は“銀バッジ”、小選挙区で落選し、比例代表選挙で復活当選した者は“銅バッジ”などと称された。「選挙区で勝ち抜いた者の方が一段上、選挙区で敗れれば一段下」(自民元議員)と見なされたのである。

 小選挙区選出議員と比例代表選出議員のどちらが上位かは議論が分かれる。しかし、当初から両選挙の重複立候補、とりわけ復活当選は問題視されてきた。「小選挙区の有権者に『ノー』を突き付けられながら、比例代表で敗者復活する仕組みはやはりおかしい」(自民中堅議員)との指摘には、誰しもが納得する。

 小選挙区で当選するには平均6万~7万票は必要とされる。もっとも、4年前の衆院選では、12万票近くを得ながら落選の憂き目に遭った候補者がいる一方、小選挙区で2万6383票しか獲得できなかったにもかかわらず、比例復活でバッジを付けた者もいる。さらにさかのぼれば、過去には小選挙区で2万票も得ずに赤じゅうたんを踏んだ者もいる。

 自民党の長老議員の一人は「比例復活した議員を見ていると、思わず春日八郎の『お富さん』を思い出してしまう」と皮肉る。もともと重複立候補は選挙制度改革に際しての激変緩和措置で、政治家が自分たちに用意した“保険”であった。本来ならば数年で廃止されるべきであったが、政治家のご都合主義によって四半世紀も残っている。

 昨年、菅義偉氏が首相に就任したとき、「何が当たり前なのかを見極めて判断し、大胆に実行する」と豪語した。「国民の当たり前の感覚」からすれば、この比例復活はどう考えても理解されない。しかし、菅首相が制度見直しを口にしたことはないし、問題意識すらないように見受けられる。

 それどころか、衆院の大島理森議長が「いったん落選した人が比例区で上がってくるのは『何で』と思われる」と指摘し、制度見直しの必要性に言及したが、首相官邸は無反応であった。どうも最近の官邸は政治的な忖度(そんたく)は得意でも、宮内庁長官の“拝察発言”や大島議長の問題提起などを真正面から受け止め、敬意を払うことは苦手なようである。

 もちろん今から抜本的な見直しを行う時間的な余裕などはないが、各党が重複立候補を認めないと決めるだけでも大きな前進となる。内閣支持率が低迷しても政党支持率が大きく下落しないためか、自民党は余裕をこいているようにも見える。しかし、どの政党も最も強く恐れなければならないのは他党などではなく、国民が政治そのものに愛想を尽かしてしまうことではないか。

【筆者略歴】

 本田雅俊(ほんだ・まさとし) 政治行政アナリスト・金城大学客員教授。1967年富山県生まれ。内閣官房副長官秘書などを経て、慶大院修了(法学博士)。武蔵野女子大助教授、米ジョージタウン大客員准教授、政策研究大学院大准教授などを経て現職。主な著書に「総理の辞め方」「元総理の晩節」「現代日本の政治と行政」など。

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