【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】やってみたいコト~トップ5

2021年6月30日=815
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算


唐突ではありますが、足し算命815の現在、やってみたいコトのトップ5を発表させていただきたいと思います。

収穫直前の地元の麦畑(三重県木曽岬町)

収穫直前の地元の麦畑(三重県木曽岬町)

【第5位】世界一周、船旅

随分と前からわたくし、船に乗るのが好きなんです。そりゃあ船の時速は飛行機や列車に比べて、とっても遅い乗り物です。でもいいじゃぁありませんか。ゆっくり、のんびりモードで。あたかも己の人生のように。

ここで「あれぇ外国、きらいなんやろぉ」と、わが友が言います。
そうなんです。嫌いって言うと差別・偏見発言になるので補足させてください。日本すなわち地元に比べると、地元ほどは好きじゃない(嫌い)ということであります。

だから各国を旅する世界一周ではなく、港でちょこっと降船するぐらいかな。もっぱら船の中での生活を満喫したい。それも大海原で。だって地球の70%は水やから。陸よりも絶対に海の方がええです。太平洋の中で逆立ちして誕生した生き物ですし。

【第4位】日本一周、車の旅

宿泊先も行先も決めぬまま、気の向くまま。行く方向だけを決めて。大好きなあの寅さんにあやかるように。

そして名所と言うよりも、どちらかと言えば名もなき場所を訪れたい。五感を存分に使って、己の感覚だけをナビにして。もちろん愛車にカーナビはありませぬ。道に迷う、寄り道、回り道、大歓迎!

さらに先立つモノがもし許してくれるならば、国産のスポーツカー。何百馬力は無理でも、200馬力ぐらいで。

こんな声も聞こえてきそうです。
「ゆっくり、のんびりが好きなん違うん。船みたいに」
仰せの通りでございます。ただしそれは己が乗った、すなわち乗せてもらった場合に限ります。

自らが運転する場合は違うんです。速い乗り物の方がいい。スピードで負けたくないから。車ならばスポーツカー、列車ならば新幹線、飛行機よりもロケットかな。繰り返しますと、自分がハンドルを握ったときは、ですよ。ここで日本一周。それも愛車で。おっと、すでに愛車スバルを手放しております私には、そこから考え始めなきゃ。

【第3位】真っすぐ横になりたい

真っすぐに眠りたい。頭や上半身を高くしたままでなく水平に。

何のこと?って思われる方もおられるでしょう。頻度はかなり減ったけれど、平らに寝ると消化液が逆流してきま す。胃を切除したことで、食道と胃の間にある逆流防止機能が失われたからです。

地球上で生きるわたくしは重力の影響を受けます。だから立っている時、座っている時に比べて、横になると逆流しやすくなるんです。消化液が食道へ、さらにはノドへと上昇してきます。この苦いヒリヒリ感がノドまで襲来すれば、この上ない苦しみとなります。

これを防ぐために就寝時は必ず、背中に丸めた布団や枕を挟んで床に就きます。この時いつも懐かしみます。真っすぐで眠り始めた、がん発病までのうれしき日々を。

なおこれは何も就寝とは限りません。実はわたくし現在虫歯の治療中です。皆さんも想像つきますよね。治療の時ベッドが倒されていく。天井を見上げるかのごとく、真っすぐにさせられてしまいます。そして、しばらくこの状態を容赦なく強いられます。

かかりつけの歯医者さんなので、がん治療であることは打ち明けてるんだけれど、逆流の件はいまだ示しておりません。歯の治療ってあおむけにならないとできなそうだし、いつ彼に告白しようかな。

近づいた麦の穂

近づいた麦の穂

【第2位】定食の1人前を平らげたい

これも胃手術の結果です。一度になかなか食べられません。食べた物を胃に蓄えられずに、そのまま腸に流し込んでしまうから。胃をなくして初めて胃のありがたさに気づきました。

世間でよくあることですよね。なくして初めて気づくなんて・・・。

これでも最近、1度の食事で1人前を制覇することは時々できるようになってきました。例えば、吉野家の牛丼。この時期ならばスガキヤの冷やしラーメン。いずれも並みです。そしてココ壱番屋のカレー。こちら、並みは無理でライス減です。

もちろん時間もかかる。発病前やったら完食タイムを競えるほどだったけれど・・・いまは30分以上はかかる。それでも完食できるものが増えたことはうれしい。

しかしそれは単品限定。ランチなどの「定食の1人前」には全く歯が立ちません。絶対に残します。

離れたテーブルで堂々と平らげるお客さん(見た目少なくとも私より10年は先輩に見える)が恨めしい。まあこんな訳で、定食の1人前を食べたい。これが第2位です。

【第1位】がんなしで生きたい

そしていよいよの第1位は、こちらです。「がんと共に生きる」という言葉が世間にはあります。大切です。私自身もがんを生きると、しばしば発しています。

しかしそりゃあ、がんなしで生きたい。これに尽きます。なぜ?なんて詳しい説明、ここでは不要でしょう。がんがなかったら、どんなに体も心も穏やかにおられることか。心身ともにもっといきいきと生きられることか。

これがかなうならば、わたくし他には何にも要りません。船旅も日本一周も真っすぐ睡眠も、そして定食完食も。全部なくてええですよ。がんが治るならば。

でも、こればっかりはね。ないものねだりです。だけれども、こんなふうに言うておきながら、もしこの願いがかなったならば。それはそれでその後、きっと他のことをい~っぱい望むんでしょうね。大橋洋平という人間は。

収穫前の地元のスイカ畑(三重県木曽岬町)

収穫前の地元のスイカ畑(三重県木曽岬町)

イマジネーションでがんを生きています

今日も思いの丈を語らせてもらえました。他人(ひと)様(さま)にはしょうもないコトであっても、当人には気ぃ楽に生きられる空想であります。この空想、意外と面白いんです。特に身も心も弱ってきているわたくしにとっては。
ここでわが友が言いました。
「空想って、なんか響きにくいなぁ」

それじゃあ英語で言い換えてみましょうか。はい、イマジネーションです。
「イマジネーションでがんを生きる」
なんかの題名にできるかも・・・

(発信中、フェイスブックおよびYоuTube“足し算命520”


おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。


このコーナーではがんと闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。

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