【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】詩「足し算命520」を自画自賛~さいご

2021年3月18日=711

*がんの転移を知った2019年4月8日から起算


近くの空港を訪ねた:この日は飛行機を見るだけで搭乗せず。いつか北海道や沖縄に行きたい、もちろん己が生きている間に

近くの空港を訪ねた:この日は飛行機を見るだけで搭乗せず。いつか北海道や沖縄に行きたい、もちろん己が生きている間に

今回は2020年秋に書いた「足し算命520」という詩の第3連(最終)である。これら5行に込めた思いをつづる。実はこの「足し算命520」、YоuTubeにも登録しており、登録名は“ひろちゃん。”である。

 

ああ限りある 唯一無二わが生命(いのち)
ああ永久(とわ)にある あなたが生きる時間(とき)
我は生く 己の思うままに
我は逝く さらば現世よ
我は生く 心(こころ)あなたよ

 

【ああ限りある 唯一無二わが生命(いのち)】

文字通りである。私の生命(いのち)はただ一つであり、他に二つは無い。かけがえのないものである。そして生命には限りがある。それが如何ほどの長さなのかは生きている間、現在進行形では分からない。無限ではないからこそ、この生命、私は大事にしたいし、皆にも大切にしてもらいたい。

自ら死を選ぼうとしている人に対しては特に。選ばざるを得ない状況なのだろうが、自ら死ぬことを選んでほしくない。その要因はさまざまであり本人にしか分かり得ないはずだから、例えばその方策などを私が打ち出すことはできない。ただしこれだけは何度でも訴えたい。生命だけは大切にしてくれ! 限りある唯一無二のものだから。

 

【ああ永久(とわ)にある あなたが生きる時間(とき)】

繰り返しになるが、確かにわが命は有限だ。人間には必ず死が訪れるから。

人間という生き物は古来生き続けているが、西暦とすれば現在は2021年。地球時間46億年から見れば微々たるものである。およそ230万分の1となろう。全然ピンとこないが、もし46億年を1日24時間に例えるならば、約0.04秒となる計算だ。西暦2021年なんて高々こんなもんだ。

ただし人間時間で言えば2000年余りは超長い。人間という種はこの時間を生き続けている。いわゆるいのちをつなぐ、いのちのバトンである。私が死んでもあなた、すなわち周りの誰かが生きていく。あなた亡き後も、あなたの周りの誰かが生きていく。そこで生命が続くこととなる。地球温暖化、巨大いん石到来、そして制御不能なウイルス感染症などにより、永久とはいかないだろうが。

 

【我は生く 己の思うままに】

やっぱり私は生きたい、そして生きられる間は生きていきたい。自ら生命を絶とうなどとは決して思わない。もちろん安楽死も望まない。本詩「足し算命520」の第2連同様、地べたはってでもしぶとく生きたいからである。

2019年に自らの白血病を公表した愛知県出身の歌手・岡村孝子さんが新聞のコラムで「たくさんの方に迷惑をかけるので病名を公表した」と語っていた。彼女の発言に大いなる思いやりと、著名人である覚悟を垣間見た。

一方私は、たくさんの人に迷惑をかけてもいいように、がんを公表した。幼少の頃より周りに迷惑をかけてはダメと教えられてきた人も多かろう。もちろんその通りだ。ただしがん患者になると周りに目を向ける余裕がなくなる。治療が一段落し病状が落ち着いている場合は違うかもしれないが、転移を抱えしんどい抗がん剤治療を続ける私は、「迷惑かけてもいい」ぐらいの気持ちで生きている。その方が気が楽だ。これが己の思うままに生きる、である。

 

【我は逝く さらば現世よ】

これも文字通りだ。生命が有限である以上、逝くときは必ずやって来る。その時は、やはりサヨナラすることになる。何に。ヨメさん、わが子、そしてこの世を生きている人たちに。つまるところ現世にさよならである。

 

【我は生く 心(こころ)あなたよ】

ひょっとして「どうかあなたの心の中に留めてください、わたくし大橋洋平のことを。大橋洋平のことをどうぞ覚えていてください、心の中に。」と、いう趣旨だと思われたのかもしれない。だがしかし、そうではない。

あなたが心の中に留めようが覚えていようが、それには関わらず私が勝手にあなたの心の中に跳び込んでいく、入り込んでいくぞ_という図式である。ここでもやっぱり主体は私となる。この方が気ぃ楽に生きられる、患者風吹かせる私は。

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「足し算命520」

落ち込んで何もできず 転移知らされたあの日
がん治療始まり 愛車スバルすでに無し

ああ悲喜めぐる 天命(さだめ)の我が生き路(じ)

今日(きょう)を一日と 足し算命よ

我は生く 手放して気ぃ楽に
我は生く さらば惜しむを

 

息を吸える生きている 患者風吹かせて

一期二会(いちごふたえ) ちっぽけな出会いまた求める

ああ さらけ出す 弱みも苦しみも
地べたはってでも しぶとく生きるぞ
我は生く できるあらん限り
我は生く さらば出来ぬを

 

ああ限りある 唯一無二わが生命(いのち)

ああ永久(とわ)にある あなたが生きる時間(とき)

我は生く 己の思うままに
我は逝く さらば現世よ

我は生く 心(こころ)あなたよ

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これで、「足し算命520」は一段落です。今日2021年3月18日を迎えて、足し算命は711となりました。本当にありがとうございます。
【わたくし生きている限りどうぞよろしくお願いいたします。】

 

 

 

(発信中、フェイスブックおよびYоuTube“足し算命520”


おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。


このコーナーではがんと闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。

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