DXにつながる「デジタル化」 デジタル化の本当の意味を知っていますか?

1.いきなりDX!とはいかない。その前にデジタル化

 

 前回、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「デジタル化」は別物であり、DXを推進するためにはまずその前段階である「デジタル化」が土台として必要であることをお伝えした。

 そこで今回は「デジタル化」について深掘りしたい。

 実は誤ったデジタル化をしてしまうとDXにつながらないことがある。リソースを投下してデジタル化を進めたにもかかわらず、 DXにつながらないのはもったいないではないか。

 ということで今回は「DXにつながるデジタル化」をお伝えしたい。

 

1-1.DXにつながるデジタル化とつながらないデジタル化

 DXにつながらないデジタル化やDXへは遠いデジタル化とはなんだろう?

 たとえば、

 工場の「ヒヤリハット報告書」を紙で運用していたが、スキャンしてPDFとして保存できるようにした。

 これは紙の情報を画像データに変換したひとつのデジタル化ではある。が、DXへの距離が遠い「部分的な」デジタル化だといえる。紙をデジタルデータに変換することで、データをコンピューターで扱えることになり、業務効率は上がるかもしれない。保管スペースや紙代・印刷代などのコスト削減にはつながるだろう。だが、この状態では単なるデータの変換にすぎない。

 書類をPDF化しただけで満足したり、大事な顧客情報をExcelで管理したり、人力で回していた稟議(りんぎ)申請ルートをなにも変えずにそのままデジタルに置き換えたり…「デジタル化」だと思って取り組んだものもあるだろう。しかし単に0と1にビット化しただけの作業や、その場限りのExcelでの管理、なにも考えずにアナログのルートをそのままデジタルで再現したプロセスなど、これらはすべてDXにつながるデジタル化とは言い難い。

 では、DXにつながるデジタル化とはどういうことだろう?

 デジタル技術を用いて「新たな付加価値を付与する」ところまで行けばDXにつながるのではないだろうか。

 さきほどの「ヒヤリハット報告書」を例にすると以下のようなイメージだ。

 工場の「ヒヤリハット報告書」をただ単にPDFに変換するのではなく、各項目をテキストにおこしデータベースとして蓄積、工場と本部間の確認ルートを見直しつつプロセスも自動化し、素早く確認と承認が回せるようにした。さらに全社へ公開し、だれもが閲覧・検索、さらに蓄積されたデータをもとに詳細の分析ができるようになった。データを素早く回付・共有・可視化・計測・分析することで全社的に重大事故の大幅削減につながり、最終的には製品の品質が上がった。

 単なるPDFの状態ではビット化されたデータそのもので、それ以上でも以下でもないが、データベース化することや、業務を見直しつつプロセスを自動化することで、素早く共有・分析・再利用・利活用ができる状態になり、新たな付加価値が付いたといえる。

 ただ単にアナログデータからデジタルデータへの変換とは大きく異なり、DXにつながるデジタル化だ。

 新たな付加価値の付け方はさまざまである。

 ひとつの有効な手段はデータベース化だ。これについては後で述べる。

 今からデジタル化をスタートするなら、付加価値を付けるということを意識して進めよう。

1-2.最終的にはDX を実現したい

 DXにつながるデジタル化のイメージがふんわりと分かったところで、やはり実現したいのは「DX」そのものである。前回もお話しした通り「DX」と「デジタル化」は次元が異なる。

 「デジタル化」が既存事業に関する効率化だとすると、「DX」は新規事業や事業そのものの変革を考えていくことだ。今までの延長線上ではないのである。

 また、大事なのは単に技術だけではなく、人と組織、企業文化も変革されていることがDXの定義である。技術を使うのはあくまで人である。人のマインドが変わらなければDXではない。既存の枠組みから解放され新しいビジネスモデルを創出しようとするマインド、そのためにデジタル技術の可能性を信じてそこに投資するマインドも併せて作っていかねばならない。

 前述した工場の「ヒヤリハット報告書」がDXになるとどうなるだろう。

 ヒヤリハットデータベースの分析データを用い、工場と本部とがIoT(モノのインターネット)でつながるシステムを構築。本部側にて、どこでなにが原因でトラブルが起きたのかを瞬時に把握。遠隔診断、リモートですぐに対応できるようにした。そして同システムを新しいサービスとして他社にも販売した。「IoTを利用してなにか他にできないか」という意識が現場にも芽生え、デジタル技術を利用した新しいアイデアが生まれる風土に変わっていった。

 自分で書いておきながら…ここまで簡単にDXは実現できないものだと思う。DXとはハードルが高い領域なのだ。

 ところが日本では、「デジタル化」も進んでいないのに、いきなりDX推進を考える企業が多く、DXを進めにくい要因のひとつとなっていることは前回お伝えした。

 この図を見ても分かるように、アナログの状態からDXへは一足飛びにはいかない。また、「情報のビット化」は済んでいたとしても、その状態からDXに飛ぶこともなかなか厳しい。さらに、情報のビット化のやり方によっては、「新たな付加価値がつくデジタル化」につながらないことがあり、情報がビット化されたまま止まってしまうこともあるので要注意だ。現在アナログの状態であれば、一気に「新たな付加価値がつくデジタル化」へジャンプすることをお勧めする。

 どちらにしろ、デジタル化によって「新たな付加価値がある状態」までされていることがDXにつながる必須条件なのである。

2.取り組むなら「DXにつながるデジタル化」を!

 DXにつながるデジタル化は、単なる情報のビット化ではなく、「新たな付加価値をつけることを意識したデジタル化」であることをお伝えした。

 まだまだ紙・ハンコ業務が残っており、これからデジタル化を進めようとしている方々へは、どうせ取り組むなら将来DXにつながるデジタル化をすべきであるということを強くお伝えしたい。

 DXを進めていく上で重要なことは、意味のあるデジタル化を積み重ねて、ビジネスモデル、業務、組織、プロセス、企業文化・風土など、企業内のあらゆる側面で変革を起こしていくこと。DXはビジネスモデルから業務、風土までと想像以上に領域が幅広く、一朝一夕で実現できるものではない。積み重ねが大事なのだ。

 

2-1.DXの第一歩! データを「分析・利活用」できる状態にする

 デジタル化によって新たな付加価値を付ける方法はさまざまあるだろう。

 付加価値の付け方のひとつとして「データの分析・利活用ができる状態にする」ということがある。

 現場の業務でみなさんは毎日さまざまなデータを扱っているだろう。言うまでもなくデータは宝の山である。が、うまく活用できているだろうか?

 今までのデータの扱いは、「分析して攻めとして利用する」というよりも、「なにかあったときのために保存しておく」意味合いが強かったように思える。

 DXを見据えるためには、データを「分析・利活用できるような状態」にしておくことが望ましい。

 まずはすぐにできることとして、紙書類やExcelデータを「データベース化」することをお勧めする。(Excelに起こすことがデジタル化だと思っている方がいらっしゃるようだが、それは大きな間違いだ。Excelは一時的に利用するにはとても便利なツールだが、長い目で見た際にデータ利活用としてはまったく使えない。用途によって使い分けしよう)

 データベース化=「複数あるデータを集めて一定の形式で整理・見える化し、情報共有や課題発見のため検索・抽出・分析などの有効活用ができること」である。

 データベース化するメリットは数多くある。

 ・データの入力ミスの防止

 ・いつでもだれでもどこでも共有・編集が可能に

 ・データの分類・検索が可能に

 ・データの分析が可能に

 ・データの管理がしやすく高セキュリティーに

 デジタル化=スキャンしてPDF化すれば良いと考えるのは早計だ。情報を項目別に整理してデータベース化することで、活用の幅がぐんと広がる。

 そして、データベース化と同時に取り組みたいのが、これらのデータが載るビジネスプロセスの見直しだ。さまざまな部署が連携することによってビジネスは成り立っているが、情報をデジタル化する際には、プロセスもデジタル化する必要がある。ビジネスプロセスの見直しチャンスともいえる。

 デジタル化する際はこの「プロセス」にも注目しておくことが望ましい。

2-2. 付加価値が付いたデジタル化実例:「お客さまの声」をデータベース化する

 これは実在するデータベース化の事例である。「お客さまの声」のデータベース化だ。

 とある食品会社。当初はお客さまの声を紙で集めていたが、事業規模が拡大するにつれ、共有が遅くなったり、クレーム対応に時間がかかったり、さらに漏れや行き違いも生じ顧客満足度が低下していた。そこで、顧客の声に真摯に向き合うためにデータベース化・システム化に踏み切った。

 データベース化する際に、改めて「なんのためのシステム化か?」を徹底的に議論し、具体的な「ありたい姿」=「お客さまにいつもありがとうと言っていただける企業」を目標にプロセスを見直し、業務にしっかりと結びついたシステムにした。

 単なる紙からPDFへの変換ではなく、データの有効活用を見据え、さらにありたい姿へ近づくためにプロセスを見直して一気に「新たな付加価値が付くデジタル化」へ舵を切ったのだ。システム化されると、情報が即時共有され、全社でお客さまの声に対するリアクションが高まったという。また、業務が効率化されると社員の時間や心に余裕ができ、本来のサービスに関する意識向上の効果があった。改善が繰り返されたことにより、結果としてお客さまの満足度は上がった。

 上述した事例通り、これらのデータは項目別に整理されており、あらゆる角度で分析され、新しい価値の創造も促進されている。

 なにより、デジタル技術を用いることにより、社員の意識が向上したことは大きい。デジタル化されたことで、お客さまの満足度が上がっていることを実感し、さらにデジタル技術でなにかできないかとアイデアが生まれる。組織や文化が変わる瞬間だ。

デジタル化推進と同時に、DXの土台を作るチャンスにしてしまおう。

2-3. 最前線にいる業務部門の気づきが変革への近道

 たまに「DXってIT部門がやることでしょ?」とおっしゃる方がいる。それは大きな誤解だ。

 現状まだまだ社内のIT化を引き受けているのはIT部門だろう。しかし、市場の変化は日に日に加速しており、その変化に合わせて現場の業務もものすごいスピードで変更を強いられている。

 しかし忙しいIT部門に頼んでも、システム改修が追いつかず、業務効率化のためのシステムのはずが逆に足かせになってしまうことがある。

 先ほどのデータ活用についても、「こういうデータが欲しい」と業務部門がIT部門に依頼してから提供を受けるまでに1カ月以上かかってしまうという話はよく聞く。このタイムラグは競争力低下やビジネスの機会損失につながる大きな課題だ。

 ビジネスのスピードを向上させるためには、業務部門自ら日頃からデータを見てインサイトを得ていなければならない。

 今やテクノロジーは大きな進化を遂げており、最近は世間をにぎわせている「ノーコードツール」などの台頭により、業務部門でもシステム化・アプリケーション化が容易にできる時代に突入している。

 先ほど例に挙げた「お客さまの声」。環境変化などでお客さまのニーズは常に変化するので、お客さまの声を管理する仕組みは運用しながら変更や改善が行えることが重要になる。これらをいちいちIT部門に頼んでいては、システムが変更されるまでの間、お客さまのニーズを取りこぼしてしまうことになる。

 業務部門がテクノロジーの進化によって自らの業務をシステム化できるようになると、「マインド」が変わる。ITの武器を手にすることにより、自分の業務を「より早く」「よりラクに」しようと考えるようになるのだ。

 勝負ポイントは「スピード」である。業務のプロがハッと気付いた時点で変更を加えて改善してみる。このスピード感は現場ならではのものだ。

 スピードが上がり業務がラクになれば、より創造的な思考に時間が割けるようになる。日々お客さまと接している業務部門にはアイデアが眠っている。

 何度も言うが、「DX」を目指すために大事なのは単に技術だけではなく、人と組織、企業文化も変革されていることである。ITを使うのは人間だ。人間がITに合わせるのではなく、人間のためにITを働かせなければならない。そうなるには、IT部門だけではなく業務部門、バックオフィス、全社がITを利用・活用し、一人一人が価値創出を意識する必要がある。

 今まで、上司が言われたことをやっていればよかった、顧客から言われた製品を作っていればよかったかもしれない。しかし、この激変する「SuperVUCA」の時代では、すべての担当者が価値創出を意識した業務改革を実施する必要がある。

 デジタル化のプロジェクトにはIT部門だけでなく業務部門のメンバーも入れて推進していくと新たな発見も出てくるし、今後のDXにもつながるだろう。

 

3. 未来を見据えたデジタル化推進を

 

 VUCAを加速させたSuperVUCAのなか、企業が生き残るためのカギは「DX」である。DXとデジタル化は別物、しかしDXを実現するために、まずは「デジタル化」が必要。さらに「デジタル化」にも段階があり、DXに直結するのは、単なるビット化ではなく、「新たな付加価値を付けることを意識したデジタル化」であるということをお伝えした。

 これからデジタル化を進めようとしている方々、「どうせ取り組むなら将来DXにつながるデジタル化」に取り組もう。そうすれば、ワクワクする未来が見えてくるだろう。

 そしてIT部門だけではなく、鍵となるのが最前線で戦っている「業務部門」なのである。DXにはIT部門だけではなく、業務部門、さらにバックオフィスも深く関わってくるのだ。

 さて、今回は「デジタル化」の種類について深堀してみたが、次回は『DXの本質は「人と組織、企業文化」にあった』と題して、DXの要である「企業文化の変革」について掘り下げていく。

 

【この記事の執筆者】

金井 優子(かない ゆうこ)

株式会社ドリーム・アーツ 社長室 コーポレートマーケティンググループ ゼネラルマネージャー

大手SIer出身。データ分析・活用をきっかけにシステムエンジニアからマーケティングに職種をチェンジ。現在はコーポレートマーケティング業務で自社のブランディング確立に奮闘中。

 

「第1回」コロナ禍で企業のDXとデジタル化は進んでいるのか?→https://b.kyodo.co.jp/business/2021-02-02_7447501/

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