菅総理にとっての4月25日 三つの国政選挙の行方は

 ユリウス暦の1185年4月25日は、栄耀栄華を誇った平家が壇ノ浦の戦いで滅亡した日だとされる。敗因には諸説あり、関門海峡の潮目が大きく変わったことが決定打になったともいう。今日、「驕れる者は久しからず」は傲慢さを戒めるためなどに用いられる成句だが、もともとの出典が「平家物語」であることは広く知られている。

 836年後の4月25日、三つの国政選挙が行われる。衆院北海道2区は吉川貴盛元農相の辞任、参院長野選挙区は羽田雄一郎元国交相の死去による補選であるが、参議院広島選挙区は河井案里氏の当選無効に伴う再選挙である。昨年9月に誕生した菅政権にとって初の国政選挙・審判となる。

 もっとも、北海道2区では、自民党は候補擁立を見送った。単に現職議員の辞職であればともかくも、収賄罪で起訴された以上、自粛の判断は説得力を持つ。惨敗を喫するよりも、不戦敗の方が受ける傷は浅いとの計算もあったのかもしれない。地元にはいくからの不満はくすぶったが、自民党本部の方針が押し通された。

 一方、立憲民主党は、参院長野選挙区に羽田氏の実弟を立てる。すでに自民党は元衆院議員の擁立を決めており、与野党の一騎打ちが展開されることになる。だが、もともと長野県は「羽田王国」であることに加え、「弔い合戦では親族に追い風が吹くのは避けられない」(自民中堅議員)との予想もある。

 河井克行・案里夫妻によって、近年、稀に見る買収事件が行われたため、当初、参院広島選挙区の再選挙に、自民党はなかなか候補者を擁立できないのではないかと見られていた。実際、出馬の打診を拒否した財界人もいるが、最終的に自民党は若手官僚を担ぎ出し、議席の死守に向けて躍起になっている。

 それぞれの補選・再選挙が行われる背景に加え、菅政権がなかなか反転攻勢に出られないことを踏まえれば、本来、野党が3勝してもおかしくないはずである。自民党内でも「春風が吹く季節になっても、それは風速30メートルの向かい風」(ベテラン議員)といった比喩が聞かれるほど、菅政権にとって極めて厳しい選挙となることが危惧されてきた。

 しかし、投開票日まで1カ月半に迫った今、「情勢は微妙」(全国紙デスク)だという。北海道2区では自民党は不戦敗だが、日本維新の会の候補が保守票を獲得すれば、立憲民主党は“楽勝”とはいかないこともある。さらに、参院長野選挙区では野党に不協和音が生じはじめ、広島選挙区に至っては、野党はまだ候補者の擁立にでさえ、たどり着いていない。

 菅政権にとっては、広島選挙区で勝利するだけでも最悪の事態は回避できる。のみならず、広島を牙城とする岸田文雄前政調会長の面目も保たれ、次期総裁選に望みをつなげられる。逆に敗北すれば、菅、岸田両氏は、政治生命が先細りすることを覚悟しなければならない。昨年の総裁選で戦った二人だが、こと参院広島補選に関しては、菅首相と岸田氏の短期的な利害は一致する。

 壇ノ浦の戦いとは異なり、来る補選・再選挙の結果によって菅首相がすぐに退陣に追い込まれることはない。だが、わずか1勝の違いでも、0勝3敗か1勝2敗かで、これからの政権運営は大きく変わる。少なくとも、後々、「潮目が変わった日」と見なされる可能性は高い。3選挙区の有権者は計450万人余り、日本の全有権者の24人に1人にすぎないが、大きな一票を行使できることは確かである。

【筆者略歴】

 本田雅俊(ほんだ・まさとし) 政治行政アナリスト・金城大学客員教授。1967年富山県生まれ。内閣官房副長官秘書などを経て、慶大院修了(法学博士)。武蔵野女子大助教授、米ジョージタウン大客員准教授、政策研究大学院大准教授などを経て現職。主な著書に「総理の辞め方」「元総理の晩節」「現代日本の政治と行政」など。

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