【コラム】都議選のにおい漂う「菅・小池バトル」

 新型コロナウイルス感染症が拡大の一途をたどっているため、菅義偉首相は渋々ながらも1月7日に1都3県に、また13日には1府6県に緊急事態宣言を発出した。年末には再発令に否定的であったにもかかわらず、わずか数週間で方針変更がなされたのは、それだけ感染者数が爆発的に増えていることに加え、小池百合子東京都知事からの強い“圧力”があったからである。

 首相就任前、小池知事との関係を聞かれた菅氏は「普通の関係」と言ってのけたが、両者の不仲は、永田町では有名である。「地味で実務型の菅首相と、派手なパフォーマンス型の小池知事とはもともと肌合いが違う」(全国紙デスク)というし、「第2次安倍政権以降の小池氏冷遇が背景にあるのではないか」(自民中堅議員)と分析する者もいる。

 だが、最も説得力があるのは「オリパラの開催可否問題、そしてその先に都議選を控えているからだろう」(閣僚経験者)との見方である。改めて指摘するまでもなく、菅首相は自民党総裁であり、小池知事は都民ファーストの会の実質的な党首である。かつて小池知事は自民党の衆院議員で、菅総務相(当時)と同時期に防衛相を務めるなど、同じ釜の飯を食う仲であったはずだが、今では敵対関係にある。

 昨年3月の都知事選では、自民党本部も都連も独自候補を模索したが、二階俊博幹事長の「勝てるのか」との一喝で、小池知事の再選を黙認せざるを得ない格好となった。しかし、3年半前の大惨敗の禍根を忘れず、半年後に行われる都議選での捲土重来(けんどじゅうらい)を期している自民党関係者はすこぶる多い。

 加計学園問題や自民党女性議員による暴言などが影響したことも否めないが、結果的に2017年7月の都議選では“小池劇場”が大成功を収めた。都民ファーストは改選前の6議席から49議席に大躍進したのに対し、自民党は34議席減の23議席しか獲得できず、「小池氏にこっぴどくやられた」(自民元都議)のである。

 のみならず、国政での自公両党の蜜月関係とは裏腹に、都議会で公明党は事実上の与党として小池知事を支えている。都民ファーストだけは定数127の過半数(64議席)には及ばないが、公明党を合わせれば78議席を占める。小池知事がパフォーマンスだけでなく、実際に政策を遂行できるのは、議会における「反対勢力」「抵抗勢力」が少数だからである。

 しかし、半年後の都議選では、当然のことながら自民党は議席の回復を目指す。都選出の自民若手議員の一人は「できれば第一党に返り咲きたい、少なくとも都政与党を過半数割れに追い込みたい」と意気込む。一方、中には「オリパラの開催が見送りになったり、都議選で再び大負けしたりすれば、当然、小池知事に振り回されてきた菅首相に責任が及ぶ」(自民国対関係者)との指摘もある。

 確かに自民党内では、4月25日の衆院北海道2区と参院長野選挙区の補選はいずれも「自民党にとって厳しい戦いになる」(下村博文政調会長)と見られている。別の中堅議員は「都議選でも負ければ『このままでは衆院選を戦えない』との声が大きくなり、菅退陣論は現実味を帯びる。オリパラ開催が難しくなれば、さらに強い逆風が吹くだろう」と見る。

 しかし、コロナ禍はまさに「百年に一度の公衆衛生危機」(テドロスWHO事務局長)。与野党間による議論と調整は極めて重要であるが、国と地方との「タテのねじれ」は政策の確度を鈍らせ、無責任体制も生みやすい。首相と知事が怨恨や面子、政治的打算でいがみ合う前に、まずは大同団結で感染拡大を封じ込めることが先決である。国民不在のさや当ては、いたずらに政治不信を募らせるだけである。

【筆者略歴】

 本田雅俊(ほんだ・まさとし) 政治行政アナリスト・金城大学客員教授。1967年富山県生まれ。内閣官房副長官秘書などを経て、慶大院修了(法学博士)。武蔵野女子大助教授、米ジョージタウン大客員准教授、政策研究大学院大准教授などを経て現職。主な著書に「総理の辞め方」「元総理の晩節」「現代日本の政治と行政」など。

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