【コラム】保守分裂より二大政党制がいい

 米大統領選では、勝敗に応じて50の州が青か赤に色塗られ、あらためて二大政党制の国であることが思い知らされた。知事選でも、民主党と共和党の候補者がしのぎを削り、しばしば政権交代が起きる。行き過ぎた選挙キャンペーンなどの問題はあるものの、二大政党制が政治に緊張感をもたらしていることは間違いない。

 翻ってわが国では、自民党が圧倒的に強い。共同通信社の直近の世論調査でも、自民党の支持率が4割を超えているのに対し、野党第一党の立憲民主党は7.2%にすぎない。そのため、一部には野党系の知事はいるものの、多くは自民系である。もしも47都道府県を色塗れば、わが国は二色ではなく、単色に近くなる。

 しかし、最近の知事選では、しばしば保守分裂が見られる。自民党本部や都道府県連がある候補を公認・推薦しても、別の保守系候補が名乗りを上げ、骨肉の争いにも似た激しい選挙戦が繰り広げられる。市町村長たちは踏み絵を踏まされ、勝ち馬に乗れなかった場合、選挙後、何らかの形で“倍返し”されることもある。

 自民党のベテラン議員の一人は「大物議員が少なくなり、党本部や都道府県連の抑えが効かなくなったためだろう」と指摘する。確かに以前は一部の有力幹部によって候補者が絞られ、それに逆らうことは許されなかったが、今ではむしろそうした談合体質や強権的手法が嫌われ、「静かなる反逆」(自民中堅議員)が起こりやすい。

 去る10月の富山県知事選では自民県連が推す現職候補が保守系の新人候補に敗れたが、見渡してみると、7月の鹿児島県でも、また昨年は福岡県や島根県でも、自民党推薦候補が敗れている。市町村長選にまでレンジを拡げてみると、さらに多くの保守分裂選挙を見つけることができ、自民党の推薦候補が敗北を喫している例も少なくない。

 保守分裂選挙は接戦になりやすく、投票率を高める効果があるため、一概に否定されるべきではない。開票率が90%でも「当確」が打たれないこともある。だが、保守系同士の争いになると、どうしても公約や政策は二の次になりやすい上、選挙後、簡単には「ノーサイド」とはならず、感情的なしこりが残りやすい。

 一方、いわゆる政治改革法が成立したのは1994年のことである。まだまだ課題は多いものの、この四半世紀、政党本位、政策本位の選挙が目指されてきた。しかし、最近、野党から自民党への安易なくら替えなど、本来の趣旨と逆行する動きが見られ、国政選挙でも保守分裂がもたらされている。「あの狸おやじが引き入れているからだ」(自民若手議員)と、暗に二階俊博幹事長を批判する声は小さくない。

 だが、いずれも突き詰めれば、ふがいない野党によって自民党、さらには政治全体の緊張感が緩んでいるといってもよい。野党が一つの塊となり、一定の支持を集めれば、保守分裂選挙に際しては、少なくとも漁夫の利を得ることはできるはずである。保守が分裂していなくても、塊となる強さは昨年8月の埼玉県知事選でも証明されている。だが、「今のままの野党では…」とため息をつく者は多い。

 コロナ禍一色となった令和2年も、残すところ半月となった。来年は衆院選が行われるし、岐阜県をはじめ、知事選が予定されているところもある。野党には高みの見物で保守分裂選挙を傍観するのではなく、まさに当事者として、わが国に健全な二大政党制をもたらす努力を期待したい。それが政治全体に緊張感を取り戻すことにもなる。

【筆者略歴】

 本田雅俊(ほんだ・まさとし) 政治行政アナリスト・金城大学客員教授。1967年富山県生まれ。内閣官房副長官秘書などを経て、慶大院修了(法学博士)。武蔵野女子大助教授、米ジョージタウン大客員准教授、政策研究大学院大准教授などを経て現職。主な著書に「総理の辞め方」「元総理の晩節」「現代日本の政治と行政」など。

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