【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】はじめまして、大橋洋平です

2020年10月28日=570日
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算


 はじめまして、大橋洋平と申します。57歳。私は現役がん患者、そして緩和ケア医をやっています。俗に言う二刀流です。

二刀流といっても

 二刀流と言うと、皆さんは誰が頭に浮かぶでしょうか。そう、大〇〇平選手ですよね。半分一致していませんか、わたくしと。ただし彼とは決定的に違うところがあります。顔など姿形じゃありませんよ。もちろんそれらも似てないですけれど。

 そうじゃなくて、私は大谷さんのように好きこのんでいま二刀流をやっている訳ではないってことです。緩和ケア医は好きで選んだ道だけれども、現役がん患者はできれば引退したい。これが本音です。

うれしくないカウントダウン

 さて今回から始まりますこのコーナー、その趣旨は「足し算命」であります。

 がん患者の多くは、その余命が気になることでしょう。死を自らのこととして実感しその地点をある意味、起点として逆算しがちだからです。そして3年と言われれば残り3年間で、6カ月と言われれば残り6カ月間で、出来そうなことを模索します。私もそうでした。肝臓転移を生じるまでは。

 ここで皆さん、考えてもみてください。6カ月よりも3年の方が日数は長く、出来ることも増え、一見安心できそうです。果たしてそうでしょうか。少なくとも私にはそうは思えません。

 余命がたとえ3年すなわち1000日としても、一日一日と生きていくと、その余命は999、998と確実に減っていきます。いわゆるカウントダウンですよね。カウントダウンは新たに迎える新年元日、来年2021年に延期された東京五輪の開会式など好ましいイベントに対しては二重丸と言えます。しかし死は、私にとって新年元日や五輪開会式とは異なり全くうれしくないものです。

 そもそも余命ってわかるものでしょうか。医師から示される余命は、あくまでも疾患の、データ上の余命に過ぎません。余命1年と言われてそれを越えている人もいるでしょう。逆だってあり得ます。余命3年と言われて半年以内で亡くなる人も。すなわち私の、オレの余命なんて、誰にもわからないものなんです。

生きると増える「足し算命」

 話はズレて余命ではありませんが手術の後に、実は1年以内に再発転移しない確率が92%と言われた私。悲しいかな手術後10カ月で肝臓に転移しました。100分の8に入れられてしまった。要するに先のことなど誰にもわからない。ならばと、確実な生きた日数に目を向けることにしました。これが「足し算命」です。

 ところで皆さん、あなたはアサ目覚めた時に、まず何をしますか。がんに限らず病を患う中では朝を迎えて、生きているあるいは生かされていることに感謝する人も多いと聞きます。もちろん私も常々何物にも感謝はしております。しかしそこは物欲満載の私、いまアサ目覚めた時にまずやることは・・・その通り、1日を足しています。生きた日数を足す「足し算命」です。これをやり始めて、私は随分と気が楽になりました。

打率より打数が好き

 さて今日は10月28日と、10月もほぼ終わりそうです。通常ならこの時期、皆さんは何を思い浮かべますか。私ならば何と言っても、プロ野球ですね。大好きです。しかもわたくし、これでもプロ野球選手を夢見た過去があります。もっとも小学校低学年の頃ですが。誰も覚えてないだろうから言えますけれども、野球ちょこっとうまかったんですよ。ただし“自称”です。

 この時期、プロ野球1年の締めくくりです。締めくくりとなると、打者であれ投手であれ、その成績が、成績の優秀さが競われます。いわゆるタイトル争いです。前者であれば打率、打点、本塁打数などであり、後者ならば防御率、勝利数、奪三振数などとなります。これらの中でもし私が、もしも万が一プロ野球選手であったならば、きっと打率や防御率よりも、打点や勝利数に目を向けていたことでしょう。

 お気づきですよね。その通り、打率や防御率は上がったり下がったり変動するものです。一方、打点や勝利数は決して減ることはありません。ひとつひとつ積み重ねていくものです。まさに足し算ですよね。 増えることはうれしい。借金以外。

勝率より勝利数が好き

 さらにこれも私の大好きなスポーツである、いやぁスポーツとは言えないか。まあいいや、ケイバです。

 これは馬にしても人すなわち騎手にしても、率と言うよりも数を競います。馬ならば勝利すればするほど上のランクに上り、最高峰のGⅠに出走可能となります。騎手も同様、勝利数を競います。2着・3着に入ったところで記録にはほぼ現れません。2番ではダメなんです。秋は春同様にGⅠレースが多く開かれます。ちなみに10月は秋華賞・菊花賞といずれも無敗の3冠馬が生まれた。デアリングタクトとコントレイルである。私の知る範囲では史上初ではないか。2020はコロナ禍に、オリンピック延期と大変な年である。それが故に稀有なことがひとつくらいあっていい。そしてこれを、ひとつひとつ重ねたい。足し算で。

がんを生きる思い

「がんを生きる緩和ケア医が答える命の質問58」(双葉社)

『がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58』(双葉社)

 

 そしてわたくし。ご縁をちょうだいし、この9月に拙著「がんを生きる緩和ケア医が答える命の質問58」(双葉社)を世に出すことができました。私はもう本が出来ただけで大満足なんです。しかしながらわたし同様にがんを生きる患者さんに私の思いを届けたい理由から、この本を国民のおひとりおひとりに手に取っていただきたく望む所存であります。

 ここでしばしば耳にするのが、〇〇ランキングという代物です。これはいわゆる上がったり下がったりするものです。時には下がる一方のことも。だから私はここには目を向けずに、自ら行商で直販売することにしました。そうすると何十冊と言う大きな単位でなくても、たとえ1冊ずつでも直接に手渡しできます。これが何とも言えない充実感をもたらしてくれます。つながりと言えます。

読んでくれたら友です

 しかしコロナ禍のいま、なかなかひとと出会えなくなっています。そこでこのコーナーの登場です。たとえ直接に出会えなくても、このコーナーを通じて出会えた方は、勝手ながらもう私には友であります。

 今日はとにもかくにも足し算大好きな、それも一足飛びではなくひとつひとつが大好きなわたくしにお付き合いくださり、誠にありがとうございました。こんな形で気ままにひとつずつやっていこうと思っています。わたくし生きている限りどうぞよろしくお願いいたします。


おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。


このコーナーではがんと闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。

 

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