欧州の先進的な公共事業に学ぶ JAPIC「欧州視察報告会」

報告を聞く参加者=東京都中央区の鉄鋼会館

 産官学民の英知を結集して政府への政策提言などに取り組む一般社団法人日本プロジェクト産業協議会(東京都中央区、進藤孝生会長、略称JAPIC)は9月29日、東京都内の鉄鋼会館で「JAPIC国土・未来プロジェクト研究会 欧州視察報告会」を開いた。産業界や自治体の関係者約60人が参加し、2017年と19年に欧州を訪れ先進的な巨大公共事業を見聞した同協議会視察メンバーの報告に耳を傾けた。

 欧州視察調査団の団長を務めた林良嗣・中部大持続発展スマートシティ国際研究センター長はじめ視察メンバー計8人が、現地で撮影した写真を紹介しながら視察事業の特徴を説明した。報告会はオンラインでもライブ配信し、関係者100人余りが視聴した。

 視察全体を総括する報告を行った林団長は、ドイツやスウェーデン、デンマーク、オーストリアで見学した道路・橋の整備や都市再開発、駅舎整備、炭鉱跡地開発などに共通してみられる特長として、環境保護など新しい時代の価値観を踏まえた「中小都市の大規模な資本投下」の姿勢を挙げ、東京一極集中にあえぐ日本の都市には、新しい時代の価値を取り入れたまちづくりの「ストーリー(物語)が欠けている」と指摘した。

総括的な報告を行う視察団長の林良嗣さん

 2000年に開通したスウェーデン、デンマーク間の海峡道路(オーレスン・リンク)などを視察した戸田建設の松崎成伸さんは、日本の道路・架橋事業ではよく行われる、施工区域を細かく分ける「工区割発注」ではなく、まとめて発注する「一括発注」が行われていたことに着目。「日本の大規模プロジェクトでは過度の工区割発注が事業費の増大や工事の遅れを招いている」として、一括発注にも目を向ける必要性を強調した。

戸田建設の松崎成伸さん

 モーツァルトが生まれたオーストリアの観光地ザルツブルクを視察した淺沼組の栗栖寛さんは、山腹の防空壕跡を活用して約65億円かけて建設された“山腹”駐車場(駐車台数1500台)の効果を説明。「多くの観光客が訪れる旧市街地への車の流入が減り、観光客が街を歩きやすくなった」と話した。

淺沼組の栗栖寛さん

 1990年の東西ドイツ統一で急減した人口を魅力ある都市づくりでV字回復させた、旧東ドイツの都市ライプチヒ市の事業に関しては、IHIの塩崎正孝さんとパシフィックコンサルタンツの平川了治さんの2人が報告。塩崎さんは、石炭の露天掘りで荒廃した炭鉱跡地を浄化再生して全く違う、美しい光景が広がる水辺空間を造り上げた人工湖水事業を紹介。「しっかりとした再生方針を決めた」ドイツ連邦政府や地元州・市の役割の重要性を説明した。

IHIの塩崎正孝さん

 平川さんは、都市の無駄な土地を市が権利者の了解を得て森に変える「暫定緑地制度」や、庁舎や中央駅、シティセンターら行政・商業施設を中心地に集約する「コンパクトシティ」など、環境と利便性に配慮した優れたまちづくりの背景には、高いレベルの専門的技術を持つ行政とまちづくりへの関心が高い市民の「協働」が根付いていたと述べ、問題意識を共有できる行政と市民の関係性が、円滑な公共事業推進の鍵を握る、とした。

パシフィックコンサルタンツの平川了治さん

 このほか、建設技術研究所の長南政宏さんは、ドイツ・ベルリン市を流れるシュプレー運河の水を自然浄化させ「泳げる川に変える」という、現在進行中のプロジェクトを紹介。「運河の水質改善だけでなく、新しいベルリンの価値を創出する」事業として注目するよう促した。

建設技術研究所の長南政宏さん

 また国際航業の林栄明さんは、20年間で8万5千人の人口を増やしたスウェーデン・マルメ市の生ごみを活用したバイオマス発電など、持続可能な都市づくりへの取り組みを説明。清水建設の大野昌幸さんは、約4千人の建設雇用創出を見込む事業費約9,800億円(18年2月時点)の巨大プロジェクトである、ドイツ・シュツットガルトの駅前再開発計画の特徴を詳しく説明した。

国際航業の林栄明さん

清水建設の大野昌幸さん

JAPIC 進藤会長

 最後にあいさつしたJAPICの進藤会長は「新型コロナによって(人、モノ、金が世界をめぐる)これまでのグローバル経済が一定程度、修正されると、多くの識者が指摘している。今後は積極的な財政出動による内需拡大の方向に向かうだろう。JAPICとしては、積極的な財政出動を受け入れられる、しっかりと整理された具体的なプロジェクトを推進していくことが大事だ」と話した。

 JAPICは、日本の明るい未来を創生することを目的に1979年11月、任意団体として発足。83年4月に社団法人化。大手ゼネコンや不動産会社、金融機関、自治体などが会員。現在の会員数は224(20年3月31日時点)。

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