【コラム】コロナ禍で政治家の評価も乱高下

 「無事の橋本(龍太郎)、平時の羽田(孜)、乱世の小沢(一郎)、大乱世の梶山(静六)」の名言を残したのは、自民党副総裁を務めた金丸信氏であった。たとえ有能な政治家でも、それぞれの能力を最大限に発揮できる状況が異なるという意味が根底にある。もっとも歴史の皮肉で、橋本氏も羽田氏も決して「無事」や「平時」のときの首相ではなかった。

 当初、新型コロナウイルス感染症は、新たなインフルエンザか、17年前のSARS(重症急性呼吸器症候群)くらいのものだろうと楽観視されていた節がある。しかし、4月12日現在、感染者は世界全体で200万人近くに達し、死亡者は10万人を超す。わが国だけでも感染者は8082人、死亡者は148人で、この数は日々増えている。

 こうした「有事」が起きると、とりわけ危機管理の面から政治家の評価が乱高下しやすい。対応が適切かつ迅速で、国民がリーダーに自らの運命を託せると思えば、支持率が急上昇するが、安倍晋三首相の場合、その傾向は見られない。共同通信社の世論調査(3月26~28日)でも、内閣支持率は45.5%で前回より微減した。

 昨年の秋頃、ポスト安倍の一人として加藤勝信厚労相が急浮上した。安倍首相も昨年末のインタビューで加藤氏の名を上げた。加藤氏が能吏であることは確かであるし、人柄を悪く言う者はいない。だが、集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応に大きな問題があったとの批判は根強い。永田町では「もともと有力(なポスト安倍候補)ではなかったが、これで限りなくゼロになった」(自民中堅議員)と見られている。

 小泉進次郎環境相の評価も下がったかもしれない。所管外のためメディアへの露出が著しく減ったことも影響しているが、最近、影が薄い。ウイルス拡大防止の一環として、閣議後の記者会見を屋外で開いたものの、それほど注目されなかった。2月16日の感染症対策本部の会合を欠席し、地元後援会の新年会に出席していたことが大きく響いている。

 安倍首相が自らの後継者として考えている岸田文雄政調会長への期待は、本来、高まってもいいはずである。緊急経済対策の柱の一つである「1世帯当たり30万円」の現金給付は、岸田氏の強い要求で実現したといわれているし、安倍首相も花を持たせた格好にした。しかし、世の中的にはまだまだ存在感が薄く、待望論はとんと聞かれない。

 一方、7月に自らの選挙が控えていることもあって、東京都の小池百合子知事の発信力は際立っている。対応と記者会見が、国が行うものよりも分かりやすい場合も多い。さらに、「(都知事の権限は)社長かと思ったら中間管理職」との言葉にも表れているように、「有事」下にあっても因循姑息な国に抗う対決姿勢も、少なからぬ人に支持されている。

 しかし、この1、2か月で最も知名度と評価を上げた2人は、北海道の鈴木直道知事と大阪府の吉村洋文知事であろう。両知事とも40歳前後ながら、抜群の対応力と説明力を見せている。いずれ「知事にしておくのは勿体ない」との声が出はじめるのではないか。国でも地方自治体でも、言葉と行動で安心を示そうとするリーダーに人は信頼が寄せるものである。

【筆者略歴】

 本田雅俊(ほんだ・まさとし) 政治アナリスト・金城大学客員教授。1967年富山県生まれ。内閣官房副長官秘書などを経て、慶大院修了(法学博士)。武蔵野女子大助教授、米ジョージタウン大客員准教授、政策研究大学院大准教授などを経て現職。主な著書に「総理の辞め方」「元総理の晩節」「現代日本の政治と行政」など。

全国選抜小学生プログラミング大会
新型コロナ特集
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ