【コラム】国会議員の読書離れ

 文化庁の「国語に関する世論調査」によれば、16歳以上の半数近くが1カ月に1冊も本を読んでいないという。パソコンや携帯電話、スマートフォンなどの普及で、若者の読書離れ・活字離れが嘆かれて久しいが、事態はより深刻だといえる。読んでいる人でも1カ月にせいぜい1、2冊程度で、かつて周りに数人はいた“本の虫”は、今や希少な存在となっている。

 永田町が「日本の縮図」である以上、残念ながらこの傾向は国会議員にも見られる。かつて議員は国会内や地下通路を歩くときも、小脇に数冊の本を抱えていることが珍しくなかった。派閥の領袖や先輩議員から「この本はいいぞ」と薦められることも日常茶飯であったし、数人で本の著者を招いて勉強会を開くこともあった。

 自ら本を執筆して出版する議員もいた。細部をゴーストライターに委ねることもあったが、大枠は議員本人の考えに基づいた。もっとも、“大物議員”の著書であれば読み応えもあったが、“小物議員”の場合、もらった方は処理に困り、政治資金パーティーの土産にされると、最寄りの駅のごみ箱は“著書”であふれた。

 とはいえ、自著には自分の思いや問題意識が盛り込まれるし、執筆しながら、自分の考えや政策がまとまることもある。ホームページやブログなどを更新しているから出版の必要はないと考えるセンセイたちもいるだろうが、知恵を絞り、いついつまでも残る本を書き上げることに大きな効能があることは間違いない。

 しかし、最近の若いセンセイたちは自ら執筆しないどころか、そもそも本をあまり読まない。忙しさにかこつけ、まともな本を1カ月に1冊も読んでいない中堅・若手議員は意外に多い。国会ではノートパソコンを持ち歩いていても、本を持ち歩く議員はめっきり少なくなった。多くの議員事務所も、本棚には資料や飾り物ばかりが置かれ、書物はあまり見かけない。かといって電子書籍を読んでいるわけでもなさそうである。「本を通じた会話が成り立たなくなった」(ベテラン議員)のも無理はない。

 趣味の本であれ、漫画であれ、本を手放さない議員もいる。確かに何も読まないよりもマシなのかもしれないが、いやしくも「国民の代表」、せめて思想や哲学、歴史、宗教の本を読んでもらいたいものである。昔の議員にはそうした教養人が多かったが、今やマキャベリやクラウゼヴィッツ、ウェーバーを読まないどころか、その名前すら知らない者もいる。そしてそれでも「センセイ」と呼ばれて胸を張っている。

 現在、新型コロナウイルスの感染予防のため、一定規模以上の集まりは自粛されている。センセイたちも国会や党の会議には出るが、不要不急の会合は取りやめている。地元でも各種会合の開催は延期されているし、あいさつ回りも敬遠されている。つまり、国会議員にとって今がうってつけの「読書月間」であり、教養を磨ける時期なのである。

 たとえ時間ができても、読書に費やさないセンセイもいるだろう。メールのやり取りと同様、読書はいわば習慣である。だからこそ、時間があるときに無理にでも習慣化すれば、たとえ忙しくなっても、その合間に読みたくなる。知らない議員も多いかもしれないが、国会は15年前の2005年に自ら「文字・活字文化振興法」を制定した。隗より始めよとは言い得て妙である。

【筆者略歴】

 本田雅俊(ほんだ・まさとし) 政治アナリスト。1967年富山県生まれ。内閣官房副長官秘書などを経て、慶大院修了(法学博士)。武蔵野女子大助教授、米ジョージタウン大客員准教授、政策研究大学院大准教授などを経て現職。主な著書に「総理の辞め方」「元総理の晩節」「現代日本の政治と行政」など。

全国選抜小学生プログラミング大会
新型コロナ特集
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ