【コラム】永田町のバレンタイン事情

 今週の金曜日はバレンタインデー。この時期になると、依然としてデパ地下は女性たちでごった返し、心ときめかせる男も少なくないが、世の中的には「義理チョコ」を自粛する動きが広まっている。ある調査では、女性の6割が義理チョコ文化に否定的で、「渡さない」と答えている。最近では「友チョコ」や「自分チョコ」などが増えてきているという。

 古い慣習の残る永田町ではどうか。「若い頃は、それこそ段ボール箱がすぐにいっぱいになるほどもらったが、最近はさっぱりだ」(自民古参議員)という。料亭のおかみたちなどからの義理チョコの数が大幅に減ったからであろうが、その議員は「年を取ったからかもしれない」とやや悲しげな表情を浮かべた。

 しかし、永田町から義理チョコ文化が消えたのかといえば、決してそうではない。外部から永田町に持ち込まれるチョコレートの数は明らかに減ったが、昔よりも女性議員の数は大きく増え、彼女らの中には、ここぞとばかりに配りまくる者もいる。「あれではまるでくノ一だ」と冷ややかに見られている者もいるが、「それは男の嫉妬」と全く意に介さない。

 小泉純一郎元首相が現役時代、バレンタインチョコを含め、一切の贈り物を受け取らなかった話はあまりにも有名である。だが、そうした議員は例外で、通常の議員やその事務所は義理チョコを受け取るし、たとえ面倒で迷惑でも、ホワイトデーにはそれ相当のお返しをする。中には毎年のように見事に“小さな海老で大きな鯛を釣る”つわものの女性議員もいる。

 世の中ではチョコの贈答数は平均3個らしく、1個当たりの価格も300円くらいだという。本命と近い上司だけであれば3個は納得できる数であるし、大きな出費も必要ない。しかし、永田町には高価なチョコレートを百箱近くもまとめ買いし、自分と秘書で手分けをして届ける女性議員もいる。もちろん、名刺に一筆を添え、目立つところに貼ってである。

 なぜ配りつづけるのかと尋ねると、「みんな配っているから義理を欠くわけにはいかない」(若手議員)との答えが返ってくる。だが、年配の男性議員は「誰がくれたかなど気にしたこともない。秘書がホワイトデーに大変になるだけだ」(閣僚経験者)と眉をひそめる。贈る方ともらう方に大きな感覚のズレがあるのかもしれない。

 その一方、男女問わず、自分を支えてくれている秘書だけにチョコレートを手渡す女性議員もいるし、家族以外、だれにも渡さない者もいる。正解はないのだろうが、そうした議員たちを見ていると、政治家としての活動を立派に果たしていれば、たとえ義理チョコを1個たりとも配らず、秋波を送らなくても、ポストや処遇に何ら支障はないようである。

 中には「配ることが問題ではない。配りすぎることが問題だ」(中堅議員)との指摘もある。確かに副大臣や政務官が大臣に、あるいは議員が所属派閥の領袖に義理チョコを渡すことは許容範囲かもしれない。だが、「もはや『男性だから』『女性だから』の時代ではない」(若手議員)との観点に立てば、それすら無用なのかもしれない。

 そういえば、与野党の女性議員たちが中心となり、一昨年、政治分野における男女共同参画法が制定された。それならばいっそのこと、まずは女性議員たちが義理チョコ自粛の申し合わせをしてはどうか。国政の課題は山積しており、議員や秘書が無駄なことに時間を費やす余裕などはないはずである。

【筆者略歴】

 本田雅俊(ほんだ・まさとし) 政治アナリスト。1967年富山県生まれ。内閣官房副長官秘書などを経て、慶大院修了(法学博士)。武蔵野女子大助教授、米ジョージタウン大客員准教授、政策研究大学院大准教授などを経て現職。主な著書に「総理の辞め方」「元総理の晩節」「現代日本の政治と行政」など。

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