【コラム】衝撃のロシア3人娘 ハイレベルなフィギュアGPファイナル

 フィギュアスケート今季前半のハイライト、グランプリ(GP)ファイナルの女王争いは激烈だった。史上まれに見るハイレベルな戦いは、予想通りシニア1年目の「驚異のロシア3人娘」が表彰台を独占、その真ん中にアリョーナ・コストルナヤ選手が立った。

 アンナ・シェルバコワ選手とアレクサンドラ・トルソワ選手を加えた3人はともにトゥトベリゼ・コーチの門下生。2018年平昌五輪で金、銀メダルを占めたアリーナ・ザギトワ選手とエフゲニア・メドベージェワ選手を育てた世界トップの指導者の下、2人の先輩を追いかけローティーンのころからジャンプを磨いた。03年8月生まれのコストルナヤ選手は既に16歳だが、シェルバコワ(04年3月生まれ)トルソワ(04年6月生まれ)両選手とともに「世界選手権前年の7月1日時点で15歳」という年齢制限をクリアしてシニア競技会にデビューした同期生だ。

 コストルナヤ選手は151センチと3人の中では一番小柄。しゃべり声を聞くとまだまだ少女のあどけなさが残るが、豊かな表現力でリンクでの存在感は抜群だ。4回転ジャンプは跳ばないが、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ=3A)は失敗しない。女子ショートプログラム(SP)では必須要素でない4回転ジャンプが跳べないため、3Aの優位性を生かしてトップに立ち、フリーではノーミスの安定感と高い芸術性で逃げ切るというパターン。今回はパーフェクト演技で世界最高を更新するトータル247・59点での優勝となった。「世界最高を出すことがモチベーションになった。とても幸せ」(ISUホームページから)と会心の演技に満足そうだ。

 2位に入ったシェルバコワ選手は最も高難度の4回転ルッツの切れ味が鋭い。4回転フリップは転倒したが、コストルナヤ選手を上回るフリートップの162・65点をマークし、「初めて挑んだフリップで着氷できなかったことは少し悲しいが、次はうまく跳べる」(同)と前を向く。

 トルソワ選手は155センチで「クワッド(4回転)クイーン」の異名を持つ。13歳の時に世界ジュニア選手権で女子初となる2種類の4回転ジャンプ(サルコー、トーループ)を成功させ、ルッツなど4回転4本を組み込んだ10月のスケートカナダでフリー166・62の世界最高得点をマークした。今回は初挑戦の3Aで転倒してSP5位。フリーは男子トップのネーサン・チェン、羽生結弦の両選手に並ぶ4種類5本の4回転を入れた圧倒的なプログラムで巻き返しを図ったが、女子初の4回転フリップは決めたものの2本で失敗した。ロシア杯で「男子と戦いたい。SPで4回転を跳べるのに、私たちには許されないから」(同)と主張した通り、4回転には強いこだわりを持つ。今回は3位だったが、潜在能力では他の2人をしのいでいる。

 ロシア3人娘のヤングパワーがさく裂したシーズン前半。それは予想以上の衝撃となり、女子フィギュア界を席巻した。今季最大のイベント、来年3月の世界選手権に向けてもその優位は変わらない。昨季のGP覇者、紀平梨花選手は初めて挑んで転倒した4回転サルコーの精度を高め、3Aを含めたプログラムを完璧にこなすことが3人に対抗できる道だろう。2シーズン前、彗星のごとく現れて平昌五輪女王となったザギトワ選手は厳しい現実を突き付けられてしまった。

【筆者略歴】

 後藤英文(ごとう・ひでふみ) スポーツジャーナリスト。共同通信では初代スポーツ専門特派員としてニューヨークで勤務。MLBワールドシリーズやW杯サッカー、NFLスーパーボウルのほか夏冬の五輪などを取材。元びわこ成蹊スポーツ大学教授。

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