【コラム】与野党にとっての「残る桜」

 国会は12月9日で閉会となった。7月の参院選後、なかなか本格的な国会は開かれず、10月4日になってようやく召集されたものの、この67日間、与野党間の丁々発止の議論はとんと聞かれなかった。国民の記憶に残っているのは、相次ぐ閣僚の辞任と萩生田光一文科相の「身の丈」発言、そして「桜を見る会」を巡る数々の疑問くらいである。

 本来であれば、内閣支持率は一気に落ち込んでも不思議ではない。だが、共同通信社が11月23、24日に行った世論調査では前回比で5.4ポイント下がったものの、それでも48.7%で、歴代内閣と比べて高水準を維持している。経済が比較的順調であることに加え、代わり得る政党・リーダーがいないことが、安倍晋三首相への逆風を大きく和らげているといってよい。

 しかし、安倍首相の在任期間が憲政史上最長となった11月20日前後から、長期政権の弊害が力説されるようになり、「桜を見る会」を巡る問題はこれを裏打ちした格好となった。公言しないまでも、「何となく潮目が変わり始めている」(自民党若手議員)と感じている者は、永田町でも少なくない。

 いかなる政策にも必ず賛否両論があるため、野党やマスコミに政策面で批判されても、なかなか首相の求心力の激減には直結しないものである。だが、まさに「信なくんば立たず」の格言通り、政治姿勢で国民に疑問を抱かれるようになれば、ボディブローのように徐々に効いてくる。何かのきっかけで支持率がたちまち急降下することも考えられる。

 長期政権になれば、得てして謙虚さが失われ、随所で油断や余裕、傲慢(ごうまん)さが表出しやすい。首相が“裸の王様”になることも、ままある。「総理は内心、国民を軽く見ているのではないか。国政選挙で6連勝してしまって、もはやかぶとの緒を締めなくなったようだ」(閣僚経験者)と指摘する者がいるように、安倍首相は代わりがいない安堵感、忘れやすい国民気質にあぐらをかいているのかもしれない。

 なまじ支持率が大きく低下しないためか、安倍首相は自分への批判勢力は一部にすぎないと高をくくっている節もある。そういえば、安倍首相の外祖父・岸信介首相(当時)は安保騒動の最中、「デモの参加者は限られている。野球場や映画館は満員だし、銀座通りも平常と変わりはない」と言い放った。批判勢力の矮小(わいしょう)化は、安倍首相に受け継がれたDNAなのかもしれない。

 江戸時代の高僧・良寛の辞世の句「散る桜 残る桜も 散る桜」はあまりにも有名である。これまで安倍政権はいくつもの障壁を何とか乗り越えてきたが、世論の動向を見誤ると、すぐに「散る桜」になることも十分にあり得る。自民党の中でも「いよいよ政権の終わりの始まりかもしれない」(中堅議員)といった辛辣(しんらつ)な声も出始めている。

 一方の野党は、微々たる予算の「桜を見る会」の真相究明ばかりに躍起になっていれば、たとえ共闘に向けて動き出しても、国民は振り向いてくれまい。「来年の通常国会でも『桜を見る会』の問題を追及して安倍内閣を退陣に追い込む」(立憲民主党国対関係者)と豪語してみても、透明度のない桜でもやはり「散る桜」であり、国民の関心は確実に薄れていく。

 これから1月20日頃まで国会は開かれない。いずれは「散る」ことを前提に、安倍政権には有終の美を描く戦略が求められるし、国民がへきえきする前に、野党は「桜を見る会」よりも大きなアンチテーゼを打ち出す必要がある。年末年始、これに知恵を絞り、成功した勢力こそが、来年の通常国会で主導権を握ることになるのではないか。来年は決戦の年である。

【筆者略歴】

 本田雅俊(ほんだ・まさとし) 政治アナリスト。1967年富山県生まれ。内閣官房副長官秘書などを経て、慶大院修了(法学博士)。武蔵野女子大助教授、米ジョージタウン大客員准教授、政策研究大学院大准教授などを経て現職。主な著書に「総理の辞め方」「元総理の晩節」「現代日本の政治と行政」など。

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