【コラム】ゴタゴタ続く理念なき五輪 課題突き付けられたIOC

 2020年東京五輪マラソン・競歩の札幌への変更計画を国際オリンピック委員会(IOC)が発表したのは大会開幕まで「あと282日」の10月16日だった。札幌に決着したのは11月1日のことで、むなしい抵抗に終わった東京都の小池知事は「合意なき決定」というしかなかった。

 13年9月に2度目の東京五輪が決まった後、さまざまな問題が起こった。エンブレムの盗用疑惑や新国立競技場の白紙撤回などがあり、昨年あたりからクローズアップされたのが「酷暑問題」。開催都市が納得していない今回の決定で、ゴタゴタ続きの五輪というイメージがまた増幅してしまった。選手のために速やかにコースを決めてほしい。

 そもそもの間違いは、IOCの「20年五輪は7月15日から8月31日の間」という指定のもとで立候補した東京の招致計画書に「天候は晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候」と明記されたことだろう。東京の夏の暑さは年を追うごとに異常となり、理想的な気候と考える人は誰もいない。10月18日付東京新聞総合面の解説には「とんでもないウソだ」と容赦なく書いてあったが、反論できないところだ。

 東京五輪が決まったとき、大学教員だった私は「新聞報道からみた2020年五輪招致」という研究報告をまとめた。その中で「国内向けには『復興』を掲げながら、対外的には『コンパクト』『安心、安全』という競技運営の手堅さを前面に出す二面作戦で、五輪を開催するための『意義』や『理念』は最後まで固まらなかった」と記した。

 コンパクト五輪のもくろみはあっという間に雲散霧消した。今回は選手の安全という観点からIOCの一方的な指導を受け、札幌開催をのんだ。この変更案はIOCでは昨年から出ていたと組織委トップがテレビインタビューで語っていたが、その時は真剣には考慮されなかった。10月には札幌移転計画を受け、東北地方でのマラソン開催案も出てきたようだが、いかにも遅すぎた。復興五輪を「理念」として強く押し出していれば、そのシンボルとなるマラソンの東北開催は早くから考えるべきものだっただけに残念でならない。

 アスリートファーストを理由に強権を発動した形のIOCにも、そのツケは必ず回ってくる。これまでは五輪最大のスポンサーのためにIF(国際競技連盟)に競技規則の変更を求め、テレビ写りのいい競技を積極的に採用してきたのである。選手が何よりも大切なら、夏季五輪開催の時期を7月~8月に限定するのはハナから間違っているし、選手よりも米テレビの意向を優先させた競泳などの午前決勝は理屈に合わない。開催都市の気候に合わせた柔軟な大会期間の選定など、IOCに突き付けられた課題は多い。それを解決しないと、五輪に立候補する都市はもう出てこなくなるかもしれない。

【筆者略歴】

 後藤英文(ごとう・ひでふみ) スポーツジャーナリスト。共同通信では初代スポーツ専門特派員としてニューヨークで勤務。MLBワールドシリーズやW杯サッカー、NFLスーパーボウルのほか夏冬の五輪などを取材。元びわこ成蹊スポーツ大学教授。

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