【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】かぶと湯温泉山水楼

 仕事で心身ともに疲れた時、都会の喧騒(けんそう)から離れて「非日常」を味わいたくなります。そんな時は「秘湯」を訪れ、羽を伸ばしながら癒しを感じたいものです。しかし、「秘湯」だからこそ何時間も遠出をしなければならず、お疲れのビジネスパーソンにとっては、そもそも向かうのが億劫(おっくう)だという声も聞こえてきそうです。

 そんな遠いけれども行ってみたい「秘湯」ですが、思い立ったらすぐ行ける距離にあれば、行ってみたいと思いませんか。今回ご紹介する温泉は、都心(渋谷駅周辺)から車で1時間ちょっとの神奈川県厚木市にあります。

その「秘湯」は神奈川県厚木市の山中に(グーグルマップより)

 グーグルマップで検索すると、渋谷から約1時間と表示されます。スタートしてすぐに首都高速道路へ入ります。東名高速道路をメインとする真っすぐな道のりはとても走りやすく、高速を降りてからも広い幹線道路のため、運転にストレスがありません。

まるで東北の「秘湯」のような山深い雰囲気(神奈川県厚木市のかぶと湯温泉、2017年7月撮影)

 厚木市の郊外を走っていると、風景はだんだんと緑豊かな山の中に変わります。温泉旅館の案内看板を目印に、幹線道路の県道を1本それて数分走り続けます。すると両サイドの木々が深く色濃くなり、アスファルトが砂利道へと変わり、行き止まりになります。その緑豊かなロケーションの中、突然一軒宿が現れます。それが今回の目的地「かぶと湯温泉山水楼」です。都会の喧騒から一線を画す静かな空間と、風情のあるレトロな建物は、まさに「秘湯」の雰囲気。何時間もかけて苦労してたどり着く「東北の山奥の秘湯」のようなたたずまいです。

重厚感のあるレトロな館内

 明治の洋館のようなオシャレな館内は、外観同様レトロ。何十年もの歴史を重ねてきた空間は、新築には醸し出せない独特の「重厚感」があり、そこにいるだけでタイムスリップしたような圧倒的な雰囲気です。また、立派な角が目を引くシカの剥製の存在感は抜群で、「秘湯感」を高めてくれます。

 日帰りでの入浴料は1000円。この辺の相場のようで、周辺の温泉施設の日帰り料金も大体このぐらいの価格です。

強烈にヌルヌルな温泉は「源泉掛け流し」

 大浴場は男女別で、それぞれ内湯と露天風呂を完備しています。内湯は5人ほど入れるコンパクトな湯船が一つのシンプルな造りです。風情ある重厚な石造りにタイルの壁が、なんとも言えない懐かしさを感じる「ひなびた」雰囲気で、そこに無色透明な源泉がなみなみと注がれています。

 お湯は泉質名の付かない「温泉法上の温泉」。pH9.7という強烈なアルカリ性を示し、肌触りは強烈にヌルヌルスベスベ。まるで「美容液」に漬かっているような「癒し」の感覚です。アルカリ性の温泉は、お肌の余分な皮脂や汚れを取ってくれる典型的な「美肌の湯」で、湯上りはツルツルスベスベ肌を実感できます。

 源泉は17.5度と冷たいため加温こそしていますが、水で薄めず循環や消毒もしない「掛け流し」で利用できるのがうれしいところです。都心近郊ではなかなかお目にかかれない貴重な温泉です。湯口からは、ほのかに甘い硫黄がアロマセラピーのように香り、温泉情緒をグンと高めてくれます。

山の風が心地よい露天風呂

 露天風呂は内湯同様コンパクトな造りになっています。湯使いも内湯同様の「掛け流し」です。露天はなんと言っても目の前に広がる大自然が気持ちよいものです。山の深い緑、眼下に流れる小さな川の景色と、心地よい山の風に吹かれながらの湯浴みは、心のリセットにはもってこいの空間です。お湯の硫黄の香りに、山の風が運ぶ緑の香りが合わさり、聞こえるのは風でこすれる葉っぱの音と小川のせせらぎのみ。そこはまさに「秘湯」そのものです。

近所にはラーメンの名店も

 今回は日帰り入浴での利用のため、ご飯は近くで食べることにしました。向かったのは「かぶと湯温泉山水楼」から、車で5分という近い場所にある「ZUND-BAR(ズンドバー)」。温泉地の風情からかけ離れたモダンでオシャレなお店です。

 実はここ、ガイドブックにも載っている「ラーメン」の名店で、一番人気の「塩ラーメン」は絶品。魚介だしのきいた甘辛いつけだれにツルツルとした平打ち麺がよく合う「つけ麺 甘露」もお勧めです。湯上がりのデトックスした体に、程よい塩気とダシの香るスープが最高のぜいたくで、五臓六腑(ろっぷ)にしみわたるおいしさです。

休日にふらっと行ける気軽な「非日常空間」

 90年以上の歴史を持つ「かぶと湯温泉山水楼」。関東大震災の後、岩の間から湧く温泉が発見されたという逸話を持ち、今でもボーリングは行わず、自然湧出の源泉にこだわるという、全国的にも大変貴重な温泉です。

 そして東京都心から車で1時間という抜群のアクセスは唯一無二の魅力。休日の午後、ふと思い立ってすぐ行ける気軽な温泉です。今ではわざわざ山奥まで行かなくても、街中の銭湯や郊外のスーパー銭湯で気軽に温泉を楽しめますが、この「秘湯」の雰囲気は「かぶと湯温泉山水楼」でしか味わえない「非日常空間」です。

【かぶと湯温泉 山水楼】

住所:神奈川県厚木市七沢2062、電話番号 046―248―0025、URL http://www.kabutoyu.com

【泉質】

温泉法の温泉/泉温:17.5度/pH:9.7/湧出状況:自然湧出/湧出量:不明/加水:あり/加温:あり/循環:なし/消毒:なし/加温掛け流し

【筆者略歴】

小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。 交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は1800以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。

PR特別企画
スポーツ歴史の検証
スポーツ歴史の検証
TAFISAワールドコングレス2019

K.K. Kyodo News Facebookページ

ニュース解説特集や映像レポート、エンタメ情報、各種イベント案内や開催報告などがご覧いただけます。

矢野経済研究所
ふるさと発見 新聞社の本
DRIVE & LOVE
11月11日はいただきますの日
野球知識検定
キャッチボールクラシック
このページのトップへ