【コラム】わくわくして見たMGC 「国民的行事」への期待

 東京五輪の代表権をかけたマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)をわくわくしながら見た。優勝候補の設楽悠太選手(ホンダ)が「大逃げ」を敢行した男子は、終盤の激しい競り合いから暑さに強い中村匠吾選手(富士通)がトップでゴール。女子は前半から積極的なレースを見せた前田穂南選手(天満屋)が1位となった。

 設楽選手の飛び出しは、感動的ですらあった。「このまま勝てば、五輪本番も楽しみになるのだが…」と思ってテレビを見ていた。残念ながら後半の失速で夢はついえたが、そのチャレンジはたたえていいだろう。前田選手は気温が30度近くになるレースで2時間25分台をマークした。来年夏の五輪はより過酷な展開が待っているだろうが、期待の持てるタイムだ。

 五輪のマラソン代表選考は、これまで何度も騒ぎとなった。代表的なのは1988年ソウル五輪と92年のバルセロナ五輪。ソウルの時は、事実上の一発勝負を故障で回避した瀬古利彦さんの「救済措置」の是非が問題となり、バルセロナ女子選考は最後の1枠を有森裕子さんと松野明美さんが争って社会的関心事に発展した。3人の代表を選ぶのに、バルセロナの時は世界選手権を含めて五つの選考レースがあったのだから、もめるのは当然といえば当然。そんな曖昧な状態がずっと続いてきた。

 それだけに今回のような一発勝負は、誰もが待ち望んでいたのではないだろうか。16年リオデジャネイロ五輪の惨敗を受けて、このプランが動き出した。仕掛け人は日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古さん。3人すべてを決める完全な一発選考とはならなかったが、3人目を決める派遣記録を厳しく設定して、MGCの価値を保った。レース前々日のNHKテレビ番組で、解説者の増田明美さんが「瀬古利彦さんが親分(プロジェクトリーダー)になって唯一いいことをした」と言って笑いを誘っていたが、まさに英断だったといえる。

 テレビ生中継はNHK(女子)とTBS(男子)が受け持ち、コラボ放送を織り込んだ。注目度は高く、沿道には主催者側の発表で50万人以上の人が詰めかけて大いに盛り上がった。瀬古さんが気にしていた視聴率も男子が16・4%、女子が13・5%。瀬古さんがその全盛時代にたたき出した数字には及ばないが、時間帯を考えれば良い視聴率だった。

 MGCは東京五輪のテスト大会を兼ねた特別なものだという話がある。そうだとすれば何とももったいない。こんなに注目を浴びるレースを1回だけで終わらせる手はないだろう。マラソン好き、五輪好きの日本人にとっては、かけがえのない五輪代表選考会であることは今回ではっきりした。ミスターこと長嶋茂雄さんの言葉を借りれば、これはもう「国民的行事」といっていい。

【筆者略歴】

 後藤英文(ごとう・ひでふみ) スポーツジャーナリスト。共同通信では初代スポーツ専門特派員としてニューヨークで勤務。MLBワールドシリーズやW杯サッカー、NFLスーパーボウルのほか夏冬の五輪などを取材。元びわこ成蹊スポーツ大学教授。

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