【コラム】存在大きい高校野球監督、期待したい36歳の指導者

 令和に入り、101回目と新しい時代に入った夏の甲子園大会決勝は優勝候補同士の激突となり、履正社(大阪)の誇る強打線が星稜(石川)の超高校級右腕、奥川投手を攻略して初優勝した。春の選抜大会で17奪三振の屈辱を味わった打線が11安打と攻略しての勝利だった。履正社の岡田監督は30年を超えるキャリアで初の甲子園制覇。「子どもらが本当によくやってくれた。よくここまでやれた」と涙ぐんだが、続けて「奥川君にチームを大きくしてもらった。練習の成果を出してくれて、うれしい」。ベテラン監督はライバルへの敬意を素直に口にした。いい言葉だった。

 高校野球で監督の存在は大きい。指導者の考え方がそのままチームに映し出され、甲子園での戦いに現れる。試合後の「お立ち台」での監督インタビューは記者時代から数え切れないほど聞いてきたが、いまでも興味は尽きない。言葉の端々に本音がのぞき、信条ともいえるものが垣間見えるからだ。

 今大会で最も強い印象を受けたのは、ベスト8で敗退した仙台育英(宮城)の須江監督だった。3回戦で敦賀気比(福井)に勝った後のインタビューでまず口をついたのは、デッドボールで試合を離れた相手チームの選手についてだった。「試合中、ずっとそればかり気になっていた。最後にベンチに戻ったと聞いてほっとした。何事もなくてよかったというのが、まず一番のこと」と話した。勝敗を語るより先に相手のことを思いやる態度に、高校野球に取り組む監督の姿勢がうかがえた。

 須江監督が就任したのは昨年1月。チーム内に不祥事があって前任者が辞任し、系列の中等教育学校軟式野球部監督だった同氏が伝統ある仙台育英を引き継ぐことになった。6月上旬までの対外試合禁止を乗り越えて昨夏の甲子園に出場を果たし、今回が2度目。それまでは奔放なチームカラーだった同校は、36歳の監督の下で着実に変化を遂げているようだ。試合中にスタンドから強風で落ちてきたレジ袋を外野手がさりげなく拾ったことや、足をつった相手投手へ速やかに水分補給に走ったことなど、細かい気配りができるチームとなった。同監督の「日本一から招待されるようなチームになる」という思いが浸透してきている。

 星稜には大敗したが、それでも須江監督は胸を張った。「負け方が残念なので説得力はないかもしれないが、日本一への距離をつかんだ。近い将来、面白い野球で日本一を取るということが描けた」。140キロを超える直球を投げる投手を4人そろえたチームには1、2年生が多く、来年も楽しみだ。同監督が自らの言葉をどう実現させていくか、その手腕に期待したい。

【筆者略歴】

 後藤英文(ごとう・ひでふみ) スポーツジャーナリスト。共同通信では初代スポーツ専門特派員としてニューヨークで勤務。MLBワールドシリーズやW杯サッカー、NFLスーパーボウルのほか夏冬の五輪などを取材。元びわこ成蹊スポーツ大学教授。

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