【コラム】彼らも月給130万円!?

 「またか」ともいえるし、「久しぶり」ともいえる。安倍チルドレンの1人が、警察から任意で事情を聞かれたという。暴力や暴言を受けたとして、元秘書が被害届を出したからである。もともとは週刊誌報道が発端であるが、火のない所に煙が立ちにくいのも確かである。録音テープまであるらしいから、“クロ”かもしれない。

 2012年衆院選で初当選した自民党議員は、安倍晋三総裁への世論の強い追い風に便乗したことから、俗に「安倍チルドレン」と称される。もっとも、彼ら彼女らによるスキャンダルや不祥事が多いことから、今日、この安倍チルドレンはしばしば「魔の3回生」とも呼ばれる。「このハゲー!」「違うだろー!」と絶叫して一躍有名になった女性議員も、また上記の議員も、まさに12年初当選組にほかならない。

 なぜ安倍チルドレンばかりが目立つのかといえば、そもそもの絶対数が多いことが理由の一つである。今となっては皮肉にも聞こえるが、12年初当選組は119人だったことから、同期会は「いいくに会」と命名された。そして当初、この期だけで自民党衆院議員全体の4割もいた。辞任や落選などでその数は80人余りに減ったものの、それでも依然として全体の3割近くを占める。

 12年初当選組といっても玉石混交で、一緒くたに批評するには無理がある。真面目に政治や政策に取り組んでいる議員がいるのも間違いない。だが、ある程度の場数を踏んできている分、そこそこの選挙テクニックを身につけ、お決まりのあいさつは無難にこなせても、政治信条や哲学、政治家としての目標を明確に持っている議員は少数かもしれない。それでもサラリーマンの給与に相当する歳費は、ベテラン議員と同額の月130万円、年2200万円である。

 05年の郵政選挙で生まれた「小泉チルドレン」も同様の問題をはらんでいたが、12年の衆院選も突然の解散によるものであったため、各選挙区では急ごしらえで候補者が擁立された。「とりあえず手を挙げた者が候補者になり、政治家として何をしたいかを考える前に、あれよあれよという間にバッジを手にしてしまった」(閣僚経験者)のである。

 ビギナーズラックと似て非なるもので、1回目は幸運に恵まれても、次の選挙でふるいにかけられるのが本来の民主主義である。しかし、14年衆院選でも17年衆院選でも、安倍首相が強い追い風をもたらしたため、チルドレンは党勢のおかげで淘汰(とうた)されず、今も7割近くが残っている。本人たちの努力もあるだろうが、たこのごとく、こうした追い風に乗じてきたといってよい。

 そのためか、現3回生の議員の中には国会議員の重みを感じておらず、政治のダイナミズムにもさして関心を抱いていない者もいる。派閥との距離感が、先輩議員たちと異なる場合も少なくない。さらに、政治家としての目標や政策を自分の言葉で語れない議員も1人や2人ではない。それでいて暴言や放言、暴行、不倫などの不祥事が次から次に発覚するから、「魔」の形容詞が付きまとう。

 かつての年功序列人事が崩れてきているとはいえ、3回生議員の多くはすでに政務官を経験し、いずれ副大臣、さらに大臣に起用されていく。しかし、政治家として、さらに政府高官としてその資質があるのかどうか、単に週刊誌に任せるのではなく、国民として十分にチェックしていく必要がある。「魔の3回生」の“製造物責任”は安倍首相ではなく、主権者である国民にある。

【筆者略歴】

 本田雅俊(ほんだ・まさとし) 政治アナリスト。1967年富山県生まれ。内閣官房副長官秘書などを経て、慶大院修了(法学博士)。武蔵野女子大助教授、米ジョージタウン大客員准教授、政策研究大学院大准教授などを経て現職。主な著書に「総理の辞め方」「元総理の晩節」「現代日本の政治と行政」など。


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