【コラム】有言実行の米女子サッカー代表、支持広がる「同等賃金」の闘い

 サッカーの米国女子代表チームがいま、脚光を浴びている。7月上旬に終わった女子ワールドカップ(W杯)でオランダを2-0で破って2連覇を果たした。1次リーグから7戦負けなしの強さで、4度目(大会最多)の優勝。帰国後、ニューヨーク市内で行われた凱旋パレードは大きな歓声に包まれた。

有言実行の優勝だった。今年3月、米女子代表選手は男子代表より待遇面で劣るのは違法だとして米国サッカー連盟を提訴。男子の約38%にとどまる報酬は差別だと切りこんだ。その中心として、男子代表との待遇の格差是正を訴えてきたミーガン・ラピノー主将は最優秀選手と得点王に輝いた。チームでも、個人でも世界一の実力を示すことで自分たちの主張に説得力を持たせた。

表彰式や、優勝パレードでは「EQUAL PAY!」(同等賃金)の声援やプラカードが目立ったという。女子W杯の賞金総額は3000万ドル(約33億円)で、これは男子W杯(約440億円)の8%にも満たない。ラピノー選手らが叫ぶ格差は、この金額だけを見ても一目瞭然だ。

 ここで思い出すのは、1970年代の女子テニス選手の闘いである。日本で昨年公開された映画「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」はその闘争の中心人物だったビリー・ジーン・キングさんを描いている。当時の女子テニスの優勝賞金は男子の8分の1だった。男子の1万2000ドルに対して、わずか1500ドル。彼女らは73年に女子テニス協会(WTA)を設立し、象徴的といえる1ドルでプロ契約を交わし、スポンサーを見つけてツアーを戦った。そしてキングさんは、男子の元トップ選手との「男女の戦い」に見事に勝利するというストーリー。3万人を集め、テレビ中継された試合に勝って潮目は変わった。

 格差是正の流れは、まず全米オープンの賞金が男女同額となったのをはじめ、2007年には四大大会のすべてが同じになった。今年初めの全豪オープン女子シングルスで優勝した大坂なおみ選手の優勝賞金は410万豪ドル(約3億2000万円)、14日に終了したウィンブルドン選手権の女子シングルスを制したシモナ・ハレプ選手(ルーマニア)の獲得賞金は235万ポンド(約3億2000万円)で男子と同じだった。

 今回の優勝が女子サッカーの追い風になるのは間違いないだろう。早くもスポンサー企業が男女の賃金格差撤廃を支持する紙面広告を打ち、米女子代表チームに50万ドルを超える寄付を行った。性的マイノリティーであることを公にしているラピノー選手には、歴史を切り開いたキングさんがだぶる。きりっとした表情とはっきりした物言いで、格差是正や性的マイノリティーの権利擁護を訴える。パレードのスピーチでは「この世界をよりよい場所にするのは私たちの責任。やるべきことをやろう」と語りかけ、ニューヨーカーから共感の拍手喝采を受けた。

【筆者略歴】

 後藤英文(ごとう・ひでふみ) スポーツジャーナリスト。共同通信では初代スポーツ専門特派員としてニューヨークで勤務。MLBワールドシリーズやW杯サッカー、NFLスーパーボウルのほか夏冬の五輪などを取材。元びわこ成蹊スポーツ大学教授。

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