【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】恐山温泉

 比叡山(滋賀県)、高野山(和歌山県)と並び、「日本三大霊場」の一つとされる青森県の「恐山」。あの世とこの世の境目である「三途川(さんずのかわ)」が流れ、死者を呼び寄せる「イタコの口寄せ」で有名な最恐(さいきょう)のパワースポットです。

 そんな三大霊場の中でも屈指の“いかつさ”を誇る「恐山」ですが、霊場内には「温泉」が湧いているということをご存じでしょうか。霊場らしく“ひなびた”木造の湯小屋は、風情があふれ、そこに注がれるのは、効能豊かな乳白色の硫黄泉です。まさに地獄に湧く極楽といえる温泉です。

冬期は入山不可の極限の地
(青森県むつ市 恐山、2016年8月撮影)

  「恐山」は、本州最北の地・下北半島の山中の最奥地に位置し、開山は夏期のみで毎年5月1日〜10月31日。冬期は大変雪深く、周辺道路を含め完全閉鎖という、「霊場」という名にふさわしい極限の地です。さらに周辺には高速道路や主要な鉄道はなく、青森市街から、車で片道3時間という距離はアクセスの悪さも、「霊場」らしさを高めてくれます。

恐山菩提寺の門

地獄のような荒涼とした大地に漂うのは「硫黄の香り」

 やっとのことでたどり着く「恐山」。そこには地獄の入り口のような「恐山菩提寺」の門が君臨しています。写真では分かりにくいですが、門の左右には「鬼の像」が仁王立ちし、まるで地獄の番人のようにこちらを見張っています。

 とはいえ、中に入るハードルはとても低く、入山料の500円を支払えば難なく門をくぐれます。訪れた日は今にも泣き出しそうな曇り空。そこに静かにたたずむ地蔵、そして水子供養の鮮やかな風車のコントラストが作り出す「地獄」のような風景です。そしてほのかに漂ってくるのは救いの「硫黄の香り」。そうだ「恐山」には「温泉」があるんだ!

境内に湧く4カ所の温泉はすべて無料

 地獄の中の極楽ともいえる「温泉」は、「恐山菩提寺」の境内に4カ所点在しています。

 そのすべてが風情ある木造の湯小屋です。その中は簡易的な脱衣場と湯船のみのシンプルなつくりと、昔ながらの湯治場を思わせるひなびた雰囲気です。ちなみに温泉は4カ所とも無料。つまり入山料の500円を支払えば、全て入り放題なのです(四つの湯小屋は男性用、女性用、混浴、男女交代制となっているため、その日に入れるのは最大3カ所)。

 湯小屋は、①冷抜の湯(男性用)②古滝の湯(女性用)③薬師の湯(男女交代制)④花染の湯(混浴)-の4カ所です。

ひなびた湯小屋に注がれる「乳白色の硫黄泉」

 風情ある乳白のお湯は、恐山に漂う香りの通りの「硫黄泉」です。源泉が近いためお湯はとても新鮮で、「かけ流し」の状態で楽しむことができます。生き生きとした硫黄の香りに包まれ、コンコンと注がれる音色を聴きながらの湯浴みはまさに「極楽」。混じりっけのない「乳白色」と年季と温泉が染み込んだ「木の色」のコントラストが美しく、目からも「癒し」を感じる至福のひとときです。

 酸性と思われるお湯は、なめると梅干しのように渋く酸っぱく、つかるとピリッと刺激的で、「霊場」のお湯らしく、「身を清める」には最適です。昔は恐山の参拝者全員に「禊(みそぎ)の入浴」が義務付けられていたそうです。そんな歴史を感じながら入る、とても“有り難い”お湯でした。

 地獄の風景の中で体験する新鮮な硫黄の香りに包まれた湯浴みは、まさに極楽。アクセスの悪さも相まって、やっとのことでたどり着く「恐山」はこの世とあの世の境目にある異世界の「非日常」空間です。境内には宿泊できる「宿坊」もあり、宿泊者限定の内湯、露天風呂も完備されてます。そんな最恐の霊場「恐山」でしか味わえない、最恐の「極楽」に足を運んでみてはいかがでしょうか。

【恐山に行ったら大間のマグロを食べよう】

 恐山から下北半島をさらに北上すること1時間半。海沿いの道に出てしばらく走ると、そこは本州最北端の街、あの「大間のマグロ」で有名な大間です。

さらに極楽を求め「大間のマグロ」を堪能

 赤身から大トロまで「大間のマグロ」を刺身、すし、あら汁で堪能しました。特に舌に乗せた瞬間とろけるトロは絶品中の絶品。価格は決して安くないですが、都内では数万円はくだらない「名物」を新鮮なまま数千円で堪能できるのは「旅の醍醐味(だいごみ)」でしょう。

【恐山菩提寺 恐山温泉】

住所:青森県むつ市田名部宇曽利山3-2

電話番号:0175―22―3825

URLhttp://simokita.org/sight/osore/

【泉質】

硫黄泉/泉温:不明/pH:不明/湧出状況:不明/湧出量:不明/加水:不明/加温:なし/循環:なし/消毒:なし/かけ流

【筆者略歴】

小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。 交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は1800以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。

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