【コラム】令和時代に息づく昭和な“グローバル企業”

 私が最近、実際に体験した話である。私は、大学で使うために、ある企業(Aとしよう)の製品を買った。結構、お値段が張るものだ。するど、ほどなく競合する企業Bからお呼び出しがかかった。

 なんだろうと思って訪問すると、「なぜ、企業Aの製品を購入したのですか」と問われた。

 そんなもの、安価で品質が良くて目的に合致しているからに決まっている。逆のものをわざわざ選ぶ人はいない。

 そのように説明したら、「当社があなたの学校から、たくさんの卒業生を採用していることを知っていますか」ときた。そして、「だから企業Aの製品など買うべきではない」とたたみ掛ける。

 うーん。

 端的に言って、学生を採用してもらうことと、その企業の製品を選定することには、何のつながりもない。そんな関係を一度でも構築してしまったら、学生採用の見返りに欠陥品を購入せざるを得なくなるような不正が生じるかもしれない。

 また、仮に「なんとかしてくれよ」と押し付けるにしても、上記のセリフの後段は余計だ。「だから企業Aの製品など買うべきではない」は言外ににおわせるにとどめるべきであって、明言するものではない。いまどき、あらゆる人がスマホいう名の盗撮機、盗聴器を持ち歩いているのである。

 録音されたとしたら、情実取引強要の証拠をのし紙付きで相手に提供していることになる。脇が甘い。

 がっかりするのは、地縁で商売しているような大福帳経営の個人商店などではなく、とても大きなグローバルを自認する企業の偉い人から上記のような発言が出てくる点だ。

 その企業は、グローバルスタンダードに準拠した、ダイバーシティー(多様性)にふんだんに配慮したクリエーティブな職場で、新しい価値を創造し、いつかGAFA(米グーグルやアップルなど)に勝つのだそうだ。

 無理だって。

 技術のポテンシャルなどのことを言っているわけではない。倫理のことですらない。GAFAだって、自社の有利になるよう有形無形の圧力はかけてくる。経営理念に掲げるようなクリーンな会社ではない。

 でも、こんな残念なやり方はしない。

 少なくとも、市場に投じる製品は、その市場の中で競争力を持っていて、買えと言われれば納得できる水準のものだけだし、プレッシャーをかけるにしても、もっと論理的だ。学生を採っているから…などという理屈にもならない理屈をこねたりはしない。

 だから、プログラミング教育必修化で論理的思考を育もう、などと言われても素直には首肯しづらいのである。論理的思考は頑張ればきっと養える。でも、行き着いた就職先で先のようなロジックを展開しなければならないのであれば、せっかく養ったスキルが泣く。

 ダイバーシティー教育をせよと言われ、採用活動のうたい文句で「うちは多様性を求めています」と強調されても、実際に入社してみると多様性などかけらも認めていない企業は多い。それだったら、「多様性なんかうちの業務の邪魔だから認めない」って最初に言えばいいのに。逆のことを言わないと人が集まらないのは分かるけれど、メッキが剥がれてミスマッチ転職が発生するなら企業にとっても学生にとっても費用と時間の浪費である。

 まだまだ日本には昭和の時代の色彩がきらめき、息づいている。そんな、お話でした。

【筆者略歴】

 岡嶋裕史(おかじま・ゆうし) 中央大学国際情報学部教授/学部長補佐。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「ブロックチェーン」(講談社)など。

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