時代読む”知のスクリーン”に600人 全国の映画館で「寺島塾」ライブ始まる

映画館の巨大スクリーンでライブ講義する寺島実郎氏(4月18日、東京都千代田区のTOHOシネマズ日比谷で)。

 

 新作映画の“主戦場”が映画館からネット配信に移りつつあることを強く印象付けたのは今年2月の「米アカデミー賞」。米動画配信大手ネットフリックスが制作してネット配信した「ROMA ローマ」が監督賞など3冠に輝いた。

 早速、映画館を基盤(ホーム)とするハリウッド側から反撃の“のろし”が上がった。

 4月3日付ロイター電のジェニファー・サバ氏のコラムは、アカデミー賞主催団体「米映画芸術科学アカデミー」(監督、俳優などの映画人で構成)が「ネット配信映画」を、アカデミー賞から事実上外す、ノミネート基準(映画館での上映日数)の引き上げ検討を始め、米司法省から独占禁止法違反の恐れを「警告」された、と伝える。

 それだけハリウッド側の危機感は強いと言えるが、サバ氏は、ケーブルテレビを上回るネット動画配信契約者数の伸びなどを挙げ、映画館からネット配信への流れは止められないとして「ハリウッドは新たな“終焉”を迎えつつある」と刺激的な言葉でアカデミー賞をめぐるごたごたを突き放している。

 日本でも米同様、ネット配信映画が日本アカデミー賞に輝く時代がいつかくるだろう。その時は映画館のあり方も変わるはずだ。

 そのような映画館の“未来”を先取りしたような催し「寺島実郎 知の再武装 ライブ・ビューイング塾」(アミューズ主催)が4月18日、東京など全国主要都市の映画館6会場で始まった。

 一般財団法人日本総合研究所会長で、多摩大学学長も務めるテレビ番組のコメンテーターなどでおなじみの寺島実郎氏が巨大なスクリーンに登場し、6万冊の蔵書を誇る自身の書庫「寺島文庫」(東京都千代田区)から、時代の認識力を深める「知の再武装」講義を約600人の“観客”に向かって生中継した。

 膨大な書籍の読解や世界の主要都市を定点観測するフィールドワークに裏打ちされた寺島氏の見識は定評のあるところ。世界と歴史を俯瞰(ふかん)するスケールの大きい寺島氏の時代・世界認識の披露の場は、テレビの小さな画面より、映画館の巨大スクリーンがよく似合う。

  来年3月までに計11回開催する「ライブ・ビューイング塾」の初回テーマは「世界経済の変調とその要因~日本経済へのインパクト」。

 寺島氏はビッグデータやIoT(モノのインターネット)などデジタル情報・技術が“支配的な価値を持つ”現在の「データリズムの時代」と、今日の世界経済の特徴である実体経済を上回る信用経済の膨張は、冷戦の動向と関係する「インターネット革命」と「金融革命」の2つの革命によって起こった、と指摘。

 インターネットは米ソ冷戦時代の安全保障リスクを分散するため米軍が開発した軍事技術の民間転用に始まり、金融革命は冷戦の終焉に伴う理工系人材の金融部門への大量移動で生じたと説明した。

 一方、冷戦構造の中で、世界第2位の経済大国に成長した日本は高度経済成長時代の「工業生産力モデル」から脱皮できず、世界経済に大きなインパクトを与えている「インターネット革命」「金融革命」に乗り遅れ、新時代に対応した経済の成長要因を取り込めないまま、平成の30年間を過ごしてしまった、と振り返った。

 インターネット革命から生まれた「GAFAプラスM」といわれる米国IT大手5社の株式時価総額(2019年2月末時点)は、同時点のトヨタ自動車など日本の東証一部上場企業上位5社の株式時価総額の約7倍、中国大手IT2社の時価総額は同1.6倍超と紹介しながら「データを支配するものがすべてを支配する」“デジタル・エコノミー時代”に日本は敗者になりつつある、と危機感の共有を訴えた。

 毎回講義の後に各界で活躍する有識者のゲストを招いて“本音トーク”を繰り広げる第2部の初回対談ゲストは、ユニクロを世界展開するファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正氏。

 大学時代の思い出からグローバル経済の現状認識、ユニクロの世界戦略など談論風発の2人の議論は広範な範囲に及び、終盤はIT革命やAI(人工知能)の進展など目覚ましい情報・技術環境の変化の中で「人間の役割はいかにあるべきか」という人生哲学的なテーマに突き当たった。

 寺島氏が「進化しているIT、ビッグデータやAIの活用がいわれている時代だが、決して生身の人間が果たすべき役割は変わらない。経営者の“地頭(じあたま)”が問われてくる」と問題提起すると、柳井氏は「経営者だけでなく、社員も中間管理職も自分の頭で考えない限り、最新技術は意味がない。技術はあくまで手段にすぎない」と賛同した。

 さらに柳井氏は「人工知能を導入しても、人間の知能を鍛えないと人工知能は使えない。われわれ服屋に一番大切なのは企画・製造・販売の能力。最新技術は、この能力の向上に役立てるものだ。AIに使われるような人生、例えば、自動運転の車に乗ったまま人生を終えるような人生は、人生ではない。面白くもなんともない」と述べ、最新技術を使いこなす人間の自主性こそ重要、と強調した。

 第2回の「寺島実郎 知の再武装 ライブ・ビューイング塾」は5月16日開催。対談ゲストは細川護熙元首相。受講申し込み、問い合わせは公式ウェブサイトまで。

スクリーンで紹介されるジョージ・ソロス氏の伝記。寺島氏は「金融革命」に言及した際、著名投資家ソロス氏との計3回の面談を振り返り「ものすごい頭のいい男、哲学者」と評した。

 

 


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