【コラム】新機軸はバスケ午前決勝、米テレビ配慮の五輪日程

2020年東京五輪の競技日程が発表された。競泳のほか陸上の一部決勝や、バスケットボール男女決勝などが午前開始と決まった。日本と米国は時差の関係で昼夜が逆転する。米国の金メダルが予想される種目が、米国での夜のテレビ生放送となるわけだ。

競泳決勝の午前実施は早々と昨年の7月に決着していた。08年北京五輪で既に午前決勝が行われていたので、「やっぱり、予想通りの展開」との印象を持った人は多かっただろう。この時の共同通信電によると、五輪組織委員会や国際水連(FINA)は夕方から夜の決勝を要望したが、米テレビ局が北米のゴールデンタイムでの放送に合わせて午前を希望、FINAがこれに同意し、組織委も受け入れ姿勢を示したという。最大のスポンサーである米テレビ側の意向が最終的に通ったということは、紛れもない事実だろう。

今回の日程作成では「国際競技連盟(IF)規則および規定を満たすこと」「世界の視聴者の視点」「人気競技のバランス」など六つの基準が設けられたそうで、その最初に挙げられたのは「アスリートファースト」。発表会見では、競泳午前決勝に関して北京五輪では選手に不評だったことに言及する質問も出たが、その回答は「FINAの最終承認を得ているので、アスリートの意見も聞いてのことだと思う。グローバルオーディエンス(世界の観客)を意識し、全体に配慮した。前もってスケジュールが分かっていれば調整可能。ベストを尽くしてほしい」(組織委・室伏広治スポーツディレクター)。どうやら選手の体調管理への配慮は、最優先事項ではなかったようだ。

08年北京五輪で実施された競泳の午前決勝の目玉選手は、米国のマイケル・フェルプス選手だった。それまでの五輪レコードである1大会7金メダルを上回る「出場全8種目金メダル(うち世界新7)」という偉業を成し遂げた。米国のファンはこれを夜のテレビ生中継で約1週間にわたって楽しむことができた。まさに米国のためのスケジュールで、「水の怪物」といわれたフェルプスも期待に応えた。

今回は陸上9種目や、男女のバスケットボール決勝などが加わった。新機軸で午前開始となったバスケットボールは米国が金メダルを義務付けられた、いわゆる「お家芸」。大学バスケットボールの全米王座決定トーナメントが日本においての高校野球以上の盛り上がりを見せる人気競技だけに、夜のリラックスした時間にファンをテレビの前にくぎ付けにしようとする作戦だ。

 陸上の午前決勝は男子110㍍障害、男女の走り幅跳びなど、これも米国勢の優勝確率の高い9種目となった。ではなぜ「世界最速」を決める注目の男子100㍍決勝(午後9時50分スタート)はリストに入らなかったのか? 実施日の8月2日は「ゴールデンサンデー」と名付けられた日曜日で、米国では日曜日午前のレースとなる。西海岸は早朝だが、ニューヨークで朝9時前とぎりぎりOKの時間帯だ。現状で米国に金メダルの絶対本命がいないことからも「アメリカファースト」を声高に叫ぶ必要はなかったのだろう。日本期待の男子400メートルリレーと合わせて夜の決勝となり、当方にとってはうれしい限りである。

【筆者略歴】

後藤英文(ごとう・ひでふみ) スポーツジャーナリスト。共同通信では初代スポーツ専門特派員としてニューヨークで勤務。MLBワールドシリーズやW杯サッカー、NFLスーパーボウルのほか夏冬の五輪などを取材。元びわこ成蹊スポーツ大学教授。


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