【コラム】保守分裂選挙は必然?

 4月7日に行われた統一地方選前半戦では、福井、島根、徳島、福岡の4県で、血で血を洗う保守分裂選挙が繰り広げられた。過去にも自民党内で対立が生じ、2人以上の保守系候補が争ったことはある。だが、一度に4県の知事選で保守勢力が分裂するのは極めて珍しい。その背景を探ると、偶然よりも必然性が見えてくる。

 永田町や霞が関では依然として安倍晋三首相や官邸の“威光”と“意向”はすさまじい影響力を発揮している。塚田一郎前国交副大臣の“忖度(そんたく)発言”の例を挙げるまでもなく、首相の名前を持ち出したり、取り入ろうとしたりする者も後を絶たない。首相の側近が阿諛(あゆ)で新元号に「安」の文字が入れようとするのではないか、などとまことしやかにうわさされたりもした。

 干されたり、つぶされたりするのを恐れ、「安倍1強」や「忖度政治」への批判は自民党内からは唱えられにくい。政権への異論と反論を繰り返し、党内野党に追いやられた石破茂元幹事長を見れば、物言えば唇寒しの風潮が漂って当然である。二階俊博幹事長が打ち上げた「安倍4選論」によって、党内はますます静かになっている。

 だが、こうした手法や風潮への不満のガスは、多かれ少なかれたまってきている。だから知事選候補者を強引な方法で決めようとすれば、おのずとそのガスが噴出する。別の言い方をすれば、自民党の各都道府県連では、不満勢力を完全に抑え込むだけの“1強”は存在せず、無理を通しても道理が引っ込むとは限らないのである。

 本来、保守勢力が分裂すれば、野党に油揚げをさらわれかねない。しかし、今の野党にそれだけの力は到底ない。そもそも、全野党の支持率を足し合わせても自民党の半分にも満たない。それどころか、国民民主党と自由党との合流構想さえ難航している。これでは保守勢力を脅かすような野党統一候補の擁立などは夢のまた夢である。

 野党が漁夫の利を得られないことが自明であるため、保守分裂選挙が起きやすい。もしも分裂選挙で共倒れになれば、反旗を翻した陣営は“反党行為”として処分される。しかし、不甲斐ない野党勢力のおかげにより、自民党内からは「今はどっちが勝っても自民であることに変わりはない」(閣僚経験者)といった余裕の声さえ聞こえる。

 保守系候補同士の争いが、むしろ自民党の支持層を広げ、強固にしているとの指摘もある。確かに実質的は無風選挙よりも、保守・中道票の掘り起こしが行われている。だが、「知事選が終わればノーサイド。参院選では自民党が一丸となって戦える」(若手議員)との楽観論が現実となるかどうかは疑わしい。

 党の決定に反しながら、何らおとがめを受けないことも、分裂選挙の要因となっている。参院選への悪影響を危惧してか、二階幹事長も早々に「処分はなじまない」と言い切った。党勢拡大のためとはいえ、声高に自民党を批判してきた野党議員を自民党にやすやすと入れる動きも、党の規律を大きくゆがめている。

 政治改革法が成立して今年で四半世紀。政党本位、政策本位の選挙が目指されたが、その形は崩れつつある。かつて二大政党制が希求されたが、今、その兆しは微塵(みじん)も感じられない。保守分裂選挙は与野党相乗り選挙よりもマシかもしれないが、多くの有権者は与野党候補ががっぷり四つに組んだ横綱相撲を期待しているのではないか。

(政治アナリスト 楠 拳太郎)


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