【コラム】まれにみるハイレベルな戦い、しのぎ削ったチェン&羽生選手

 フィギュアスケートの世界選手権男子は、まれにみるハイレベルな戦いとなった。優勝したネーサン・チェン選手(米国)、2位の羽生結弦選手(ANA)ともに新ルール導入後初となる300点台突破だった。

 2年連続の王者となったチェン選手はフリーで216.02点をマークし、合計得点はなんと323.42点。直前に演技した羽生選手のフリー206.10点、合計300.97点の世界最高得点をあっさり更新してみせた。プレッシャーなどどこ吹く風、最初の4回転ルッツを高く、優雅に決めて4.76点もの加点を引き出した。最も難しいジャンプをこれほどまで余裕をもって美しく跳んだ選手を初めて見た。その後もミスのない演技で、26.85点もの加点となり技術点だけで121.24点、羽生選手の110.26点を圧倒した。

 昨年の平昌五輪では若さが出てショートプログラム(SP)で17位と大きく出遅れたチェン選手(最終順位5位)だが、今回はSPでもただ一人100点台に乗せる首位。昨年に米東部の名門、エール大に進学して学業との両立を図った今シーズンはグランプリファイナルでも優勝し、19歳で世界トップの座に就いた。

 羽生選手は右足首故障から約4カ月ぶりの復帰だった。SPで4回転サルコーが2回転となってチェン選手に12.53点の大差をつけられた。フリーではポイントになった冒頭の4回転ループを成功させるなど回復途上にある現状ではほぼ満足のいく内容だったが、フリーで10点近く及ばなかった。4回転ジャンプだけを比較しても、両者がともに連続ジャンプを含めて2回跳んだトーループを除き、チェン選手が高難度のルッツ(基礎点11.50点)、フリップ(11.00点)を成功させたのに対し、羽生選手はループ(10.50点)、サルコー(9.70点)の構成。そのサルコーが回転不足となったのだから優劣は明らかだった。

 演技直後の羽生選手のコメントには悔しさがあふれた。「負けには負けっていう意味しかない。はっきり言って自分にとっては、負けは死も同然だと思っている」。驚くほどストレートに気持ちを表現した。そして「強い選手に勝ちたい」と新たな目標を設定した。

 五輪連覇の羽生選手としてはこのままでは終われないし、終わるはずもないだろう。ライバルが強ければ強いほど燃える男だけに、チェン選手との覇権争いは来季ますます激烈になりそうだ。フィギュアファンとしては、今から楽しみでならない。

 最後に、この世界フィギュア選手権男女シングルの優勝賞金は6万4000ドル(約700万円)で2位は4万7000ドルだった。これでも昨年から優勝で1万9000ドル、2位が2万ドルのアップとなったそうだが、4回転ジャンプの連発でしのぎを削った2人の見事なパフォーマンスを見ると、もっと高額でもいい気がする。

【筆者略歴】

後藤英文(ごとう・ひでふみ) スポーツジャーナリスト。共同通信では初代スポーツ専門特派員としてニューヨークで勤務。MLBワールドシリーズやW杯サッカー、NFLスーパーボウルのほか夏冬の五輪などを取材。元びわこ成蹊スポーツ大学教授。


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