【コラム】永田町流「政治家の殺し方」

 厚生労働省の統計不正問題で、安倍晋三内閣は連日、野党から厳しい追及を受けている。とりわけ根本匠厚労相は矢面に立たされ、一段としゃがれ声になっている。もっとも、12年前の「消えた年金問題」の再現になると手ぐすね引いて待っているマスコミも多いが、直近の世論調査を見る限り、今回も安倍内閣は“軽傷”で済むかもしれない。

 政権がぐらつかないのは、たとえ国民の中に批判や不満がくすぶっても、自民党内で「安倍1強」が続いているからに他ならない。“内ゲバ”と“オウンゴール”が目立つ野党のふがいなさも手伝って、自民党は比較的高い支持率を維持している。そうした状況下で、安倍首相が自民党内で抜きん出た存在であれば、政権に陰りは出にくい。

 わずか5カ月前までは、石破茂元幹事長が安倍首相の3選を脅かすような立派な「党内野党」を演じ、新聞やテレビにひっきりなしに登場した。石破氏の一挙手一投足は注目され、安倍首相の政策や政権運営に対する批判も大々的に取り上げられた。そして総裁選では党員票の45%近くを獲得するなど、大善戦した。

 しかし、総裁選が終わると、マスコミに登場することはめっきり少なくなった。今やテレビに出るのは、もっぱらバラエティー番組になってしまっている。2月10日の自民党大会後にぶら下がり取材を受けてニュースで報じられたが、多くの者は「久しぶり」の印象を受けた。「周辺はイメージ戦略でバラエティー番組に出ていると言っているが、徐々に永田町で居場所がなくなってきているのではないか」(中堅議員)との指摘もある。

 石破氏の影が薄くなっているのは、単に彼が総裁選で敗れたからではないし、性格が根暗でマニアックだからでもない。むしろ「官邸と党本部による『石破つぶし』」(閣僚経験者)だと見られている。「前々から石破バッシング(たたき)はあったが、今では石破パッシング(無視)が進められている」のだという。

 かつて石破氏は幹事長や地方創生担当相として政権の一翼を担ったが、その後は日の当たる役職はあてがわれていない。のみならず、自民党の重鎮たちが務める総務も外され、党内における発言の場が著しく狭められている。組閣に際しては、自派(水月会)のメンバーが官邸に「一本釣り」され、領袖の顔に思いっきり泥を塗られている。

 党本部の応援弁士の要請からも、石破氏は外されている。1月下旬に行われた山梨県知事選には、200人近くの自民党議員が動員されて接戦を制したが、石破氏には声がかからなかった。2月6日の安倍首相と各派事務総長との懇談会には、石破派だけが呼ばれなかった。だから「やがて冷や飯さえも食えなくなるかもしれない」(石破派若手議員)といった泣き言もささやかれる。

 石破氏は頻繁に自身のブログを更新し、主張を発信している。フォロアーも少なくない。だが、組織の中で活動・活躍の場が与えられず、存在感を示せないことは、総理総裁を目指す者にとって致命的である。口を開けば政権批判ばかり繰り返すから、自業自得の面は否めないが、このままでは、影がますます薄くなっていくことは間違いない。

 石破氏が政権批判に終始したり、理屈っぽかったりするため、永田町におけるシンパは激減している。それでも一定の国民的な人気があるから、官邸にとって厄介な存在である。しかし、だからと言って選挙に“刺客”を立てたりする必要は少しもない。今まさに官邸や党執行部が進めているように、主要な役職から遠ざければ十分なのである。

 石破氏が干からびる前に安倍内閣がつまずくのか、それと安倍首相は退陣までに石破氏の存在感を最小化し、総裁候補としての芽を摘み取れるかは、予想の分かれるところである。ただ、「政治家を殺すには刃物は要らぬ。暇を3日もやればいい」(三役経験者)とは、けだし名言で石破氏が“殺されまい”と懸命になっている姿が妙にけなげに映る。

(政治アナリスト 楠 拳太郎)


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