【コラム】歴史に残る快挙、もっと評価されていいジャンプの小林陵侑選手

 昨年末から1月6日まで行われたノルディックスキー・ジャンプの「ジャンプ週間」で、小林陵侑選手(土屋ホーム)が4戦全勝で総合優勝した。22歳のホープが歴史に残る快挙をやってのけた。

 ジャンプ週間は1952-53年シーズンから始まり、今回で67回目という伝統を誇る。スキーの盛んなヨーロッパではステータスの高い大会で、そこで勝つことは五輪や世界選手権の優勝にも匹敵する。一発勝負の五輪とは違い、8日間で4試合をこなすハードな連戦。真の実力が問われることがその価値を高めているのだ。

 長い歴史の中でも4戦全勝の完全制覇はなかなかできなかった。初めて達成したのは2001-02年のスベン・ハンナバルト選手(ドイツ)。昨シーズンにカミル・ストッフ選手(ポーランド)が2人目となり、今回の小林選手が3人目だった。簡単ではないだけに、お見事というほかない。

 初戦が行われたオーベルストドルフ(ドイツ)は、私も1987年世界選手権で取材に行ったことがある。成熟したスキー・リゾートで、ジャンプや距離といった地味なノルディックスキーの大会に多くのファンが集まる。今回も2万5000人を超える大観衆が詰め掛けたという。

 日本では五輪での活躍が圧倒的に評価される傾向にあるが、欧米では世界選手権やジャンプ週間のような特別な大会の優勝者は広く認知され、敬意の対象となる。例えば、スケートが国技と言えるオランダでは短距離から長距離までの総合を争う世界選手権のチャンピオンは、種目別で争う五輪覇者よりも格上。リンチェ・リツマ選手は五輪では金メダルを取れなかったが、国民的人気を誇った。小林選手のニュースは新聞の1面を飾ったが、もっともっと日本のメディアで取り上げられ、評価されてもいいのにな、と個人的には思う。

 では、収入面はどうだろうか? 小林選手が今回の総合優勝で手にした賞金は2万スイスフラン(約220万円)だった。スキー・ジャンプのワールドカップ(W杯)は1試合の優勝賞金が1万スイスフランとなっている。小林選手はジャンプ週間までの11戦で8勝しているので、既に1000万円以上の賞金を獲得しているが、果たしてこれがそのパフォーマンスに見合った金額なのかどうか。恐怖と闘い、命を削るジャンプ選手だけに、割が合わないような気もする。

 スキーでもより人気があり、スポンサーが集まるアルペンのW杯では昨季の総合優勝者、男子のマルセル・ヒルシャー選手(オーストリア)、女子のミカエラ・シフリン選手(米国)がともに7000万円を上回る賞金を手にしている。

 ちなみにスピードスケートのW杯は1レースの優勝賞金が基本的に1500ドル(約16万5000円)、種目別の総合優勝賞金は1万5000ドル(約165万円)。フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズの1大会優勝賞金は1万8000ドル(約200万円)、GPファイナルは2万5000ドル(約275万円)で、3大会を制した紀平梨花選手の賞金は約670万円となる。

【筆者略歴】

後藤英文(ごとう・ひでふみ) スポーツジャーナリスト。共同通信では初代スポーツ専門特派員としてニューヨークで勤務。MLBワールドシリーズやW杯サッカー、NFLスーパーボウルのほか夏冬の五輪などを取材。元びわこ成蹊スポーツ大学教授。


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