【コラム】安倍首相、持つべきは良きお友だち

 通常国会の召集日はなかなか定まらないが、今月下旬から始まることは間違いない。もっとも、安倍晋三首相は悲願の憲法改正に向けた議論をもくろんでいたが、シナリオは狂いつつある。だから2018年度第2次補正と来年度予算の審議を除けば、これといった重要案件は見当たらない。御代替わりの諸行事の日数を差し引いたとしても、150日間の会期は十分すぎる。

 「領土問題で何か前進があるのではないか」「衆参同日選挙のためではないか」などとささやかれているが、いずれもまだ根拠はない。自民党国対関係者は「こんなスカスカの国会も珍しい」と首を傾げる。野党や一部週刊誌は、片山さつき地方創生担当相や桜田義孝五輪相の追及を強めようとしているが、自民党幹部は「もはや峠を越した」と楽観視する。

 だが、そもそもなぜ安倍首相の思い描いていたシナリオは狂ったのか。安倍首相は昨年秋の臨時国会で自民党の改憲案を提示し、今国会で与野党協議を始めようと意気込んでいた。所信表明演説でも、「各党が具体案を示すことで、国民の理解が深まる」と豪語したが、衆参の憲法審査会が満足に開かれることはなかった。

 安倍首相がごり押ししなかったのは、憲法改正への国民の理解と支持が伸び悩んでいることもあるし、連立のパートナーである公明党の慎重姿勢もある。そうした中で強権を発動すれば、4月の統一地方選や7月の参院選で自民党はしっぺ返しを受けかねない。一部のタカ派を除けば、自民党内でも、早期の改憲論議を求める声は小さい。

 綸言汗の如し(りんげんあせのごとし。皇帝が一度発した言葉は取り消したり訂正したりできない、という中国の格言)―。本来であれば、一国の最高権力者が口にしたことが実現されなければ、責任問題が浮上する。少なくとも、安倍首相のレイムダック(死に体)化は免れない。だが、自民党内でも、また野党の中にも、安倍首相を指さす者は皆無に等しい。そしてその疑問を解くキーマンが、自民党憲法改正推進本部長の下村博文氏である。

 昨年11月、下村氏は講演で「議論さえしないのは国会議員の職場放棄」と野党を厳しく批判した。結局、野党の猛反発を受けて下村氏は謝罪するとともに、衆院憲法審査会の幹事就任を辞退し、委員からも外れた。多くのマスコミは下村氏の失言・放言によって審査会が開かれなくなったと論評したが、事はそう単純ではないかもしれない。

 閣僚経験者の一人は、「下村氏は確信犯」だと見る。もともと下村氏は安倍首相に極めて近いお友だち。第1次安倍内閣で官房副長官に起用され、第2次内閣発足に際しては文部科学相に抜擢されて3年近くも務めた。だから「下村氏はあえて失言し、安倍首相の責任が問われないようにしたのではないか」とその閣僚経験者は解説する。

 「スタンドプレーの好きな下村氏が、みずから悪役を引き受ける美談はあり得ない。あの人は犠打を拒む」(中堅議員)との異論もある。しかし、12月に再び「護憲は思考停止」と野党をののしっても、下村氏は改憲推進本部長を更迭されてない。下村氏が安倍首相の“刎頚(ふんけい)の友”(お互いに首を斬られても後悔しないような仲、の意味)かどうかはともかくも、二人に阿吽(あうん)の呼吸が見て取れる。

 では、安倍首相は無為に時間を過ごしていたのかといえば、そうでもない。昨年11月下旬、安倍首相は一足早い“ジャンボ宝くじ”を当てた。それは2025年の大阪万博の誘致決定であり、これにより、安倍首相のもう一人のお友だち、橋下徹氏が実質的オーナーの日本維新の会は、改憲勢力にぐっと近づいた。やはり持つべきは、良きお友だちかもしれない。

(政治アナリスト 楠 拳太郎)


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