【コラム】「カネ」も力に、ベルリン・マラソンで世界新記録

 9月16日のベルリン・マラソンで驚異的な世界新記録が生まれた。それまでの世界記録を1分18秒も短縮する2時間1分39秒。記録をつくったのはエリウド・キプチョゲ(ケニア)だった。

 キプチョゲは2016年リオデジャネイロ五輪男子マラソン金メダリストで、脂の乗り切った33歳。これで「五輪覇者」と「世界最速」の称号を併せ持つ、最強のマラソンランナーとなった。彼は非公認では2時間0分25秒という記録も持っている。

 ベルリン・マラソンは高低差がほとんどなく、記録の出やすい高速コースとして知られている。03年にポール・テルガト(ケニア)が初めて2時間5分を切る2時間4分55秒をマークして以来、7度も続けて世界記録を更新してきた。今回は14年にデニス・キメット(ケニア)が2時間3分を切って(2時間2分57秒)以来、4年ぶりの記録更新となった。

 この快挙で、キプチョゲの懐も潤った。地元からの報道によれば、キプチョゲは優勝賞金と世界新記録ボーナスのほかにスポンサーからのボーナスを加えて、少なくとも2500万ケニアシリング(約2750万円)を手にしたという。「カネ」の力も、世界新記録の大きな要因になった。

 マラソンの賞金レース化は1980年代になって一気に拍車が掛かった。ちょうど陸上短距離のスーパースター、カール・ルイス(米国)が出現したころで、金銭授受が「競技者基金制度」の名の下に合法化されたのに歩調を合わせている。選手は直接の金銭受け渡しには関わらず、国内連盟の基金に振り込まれて管理されるというシステムだった。

 日本選手で初めて高額賞金を手にしたのは当時、最強ランナーとして世界のマラソン界をリードした瀬古利彦さん。1986年春のロンドン・マラソン、同年秋のアメリカズ・マラソン(シカゴ)、87年春のボストン・マラソンと主要レースで3連覇した。ロンドン、シカゴの2レースの出場料と賞金は合わせて12万ドル(当時のレートで約1900万円)。ボストンでは出場料、賞金、ボーナスが基金に振り込まれた。副賞のベンツも金に換算すると、総額は日本円にして約2100万円だった。私は記者としてこの3レースを取材したが、瀬古さんは報酬に値する圧倒的な強さを披露した。

 今では、スムーズに賞金を手にすることができる。18年のドバイ・マラソンは優勝賞金20万ドル(約2200万円)と高額で、世界新ボーナスは25万ドル(かつては世界新ボーナスが100万ドルの年もあった)。川内優輝選手が勝ったボストンは15万ドル、東京マラソンでも1100万円の優勝賞金が用意された。東京で16年ぶりの日本新記録をマークした設楽悠太選手が賞金と日本新ボーナスの計900万円のほかに、日本実業団陸上競技連合から1億円の褒賞金を受けたのは記憶に新しい。選手のモチベーションを高める大金だった。

 マラソンで初めて2時間を切るのはいつになるのか。キプチョゲが来年のベルリンで歴史をつくるのか、あるいはどこかで新鋭が飛び出すのか? その時、どれだけのボーナスが用意されるのだろう。

【筆者略歴】

後藤英文(ごとう・ひでふみ) スポーツジャーナリスト。共同通信では初代スポーツ専門特派員としてニューヨークで勤務。MLBワールドシリーズやW杯サッカー、NFLスーパーボウルのほか夏冬の五輪などを取材。元びわこ成蹊スポーツ大学教授。


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