【甲子園―100回目の夏⑦】素晴らしいレジェンド始球式、松坂投手も見たい

 全国高校野球選手権が8月5日、始まった。100回目の夏の開幕は日曜日。甲子園は開門が午前6時という異例の早さとなり、同7時40分には「満員通知」が出された。入場券の販売をストップするというアナウンスだ。30度を超える猛暑の中で、スタンドは4万2000の大観衆で埋まった。

 今大会は100回を記念して、夏の甲子園を沸かせた元球児の始球式が決勝までの試合日に企画された。名付けて「甲子園レジェンド始球式」。そのトップとして、開幕ゲームで登場したのは、プロ野球巨人や米大リーグのヤンキースで活躍した松井秀喜さん。くしくも松井さんの母校である星稜が、抽選で開幕試合を引き当てた。しかも試合前、キャプテンがじゃんけんに勝って後攻を取ったことで、星稜ナインが守りについた。

 舞台はそろった。というより、そろい過ぎたのか? 注目の中、松井さんの投げた球はワンバウンドとなり、さしものレジェンドも頭を抱えて苦笑い。「(星稜の)黄色いユニホームを見たら、力が入った。この年になっても、甲子園の魔物に襲われた」とのコメントは奮っていたが、素晴らしいイベントになった。

 私が高校野球の担当をしていた1980年代には、こんな光景は想像すらできなかった。日本の野球界はプロアマの断絶が長く続いていた。1961年、プロ側による社会人選手の強引な引き抜きが起こった。この「柳川事件」が決定打となって、交流は途絶えた。

 社会人や大学に比べ、高校野球ではプロとの関係改善の動きは鈍かった。90年代に入って、元プロ選手が高校教諭経験10年で指導者となれる特例制度が5年(94年)、2年(97年)と短縮された。2003年になると、現役プロ選手が高校球児を指導するシンポジウム「夢の向こうに」がスタート。その後、プロ側のアマ選手への裏金問題もあったが、10年には日本学生野球憲章が大きく改正され、特例だったプロ野球との交流が「できる」という表現に変わった。さらに、13年には2年の教諭経験が撤廃され、座学の研修だけで監督になれる道が開けた。

 高校野球100年となった15年夏の全国選手権では、センバツ優勝投手であり、プロで圧倒的な本塁打記録をつくった王貞治さんが、プロ経験者では初めて甲子園大会で始球式を行った。プロアマ関係の新たな一歩となる投球は、見事なストライクだった。今回の「レジェンド始球式」はその流れを加速させたもので、桑田真澄さん、佐々木主浩さん、中西太さんら、プロで一時代を築いた選手が登場する。

 今年7月の岩手大会では、楽天の銀次選手が現役プロとして初めて高校野球で始球式を行っている。時代は変わった。プロとアマが手を携えて野球の振興を図るのは、本来は当たり前のこと。横浜のエースで春夏連覇してから20年たったいまもプロで活躍する松坂大輔投手が甲子園の始球式で投げる姿を見たいと願うファンは私一人だけではあるまい。

【筆者略歴】

後藤英文(ごとう・ひでふみ) スポーツジャーナリスト。共同通信では初代スポーツ専門特派員としてニューヨークで勤務。MLBワールドシリーズやW杯サッカー、NFLスーパーボウルのほか夏冬の五輪などを取材。元びわこ成蹊スポーツ大学教授。


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