【コラム】アマゾンは正義を売れるか

 アマゾンとは何のサービスを提供するサイトだろうか。

 最初は本の通販をするサイトだったはずだ。

 それがいつの間にか、「地球上で最も豊富な品ぞろえ」を標榜する、何でもありの通販サイトになり、クラウドでコンピューティングパワーを提供するサイトになり、既存産業を破壊するデジタル・ディスラプション(情報技術による創造的破壊)の策源地となった。

 そして、なんだか民主主義のメソッドも書き換えようとしているように思えるのである。

 若年層が選挙に行かないのは、もはやデフォ(標準)である。他に楽しいことはいくらでもあるし、忙しいのにわざわざ休日をつぶしていく理由はない。若年層の気を引こうと、選挙のエンターテインメント化や期日前投票による利便性の向上が図られてきたが、投票率を上向かせるには至っていない。

 どのみち、若年層が躍起になって投票したところで、高齢者層の票数を上回るのは頭数の点で無理である。政治への影響力は不可避的に高齢者層が多くを握る、いわゆるシルバー民主主義が進展している状況下では、投票へのモチベーションは上がらないだろう。

 では、若年層は意見を言ったり、社会を変えたりすることを諦めてしまったのだろうか。学校では、生活や社会を良くするために、選挙を通して自分の意見を主張しようと習った。選挙に希望を見いだせなくなった今、意見表明の舞台からも降りてしまったのだろうか。

 どうも、そういうことではなさそうなのである。彼らは、もっと簡単で効率的な「社会に影響を与える方法」を編み出した。振る舞いの悪い個人がいれば、その人が所属する会社にメールやホームページの問い合わせフォームから連絡する、評判の悪いイベントがあれば、そのスポンサーとなっている企業に電話をする。他にもやりようはさまざまだ。

 この手法は確かに効果がある。ポイントは、本人や当事者企業と直接コミュニケーションを取らないことだ。本人に悪い振る舞いを指摘しても、反省しないかもしれないし、むしろ逆ギレされるかもしれない。当事者企業にクレームを入れても、握りつぶされるかもしれない。

 でも、その上司やスポンサーであれば、聞き入れる可能性は高まる。純粋に悪かったポイントの是正のため、社内抗争で相手を追い落とすきっかけを探していたため、世間体を気にしたため…。理由は多岐にわたったとしても、悪さをした個人や組織が何らかの不利益を受けることになる。

 この種の出来事を見て、胸のすく思いを感じることはあるだろう。ずいぶん傍若無人に振る舞っているなあと思っていた人が、上司に怒られていたりすると、単純にうれしい。

 こうした行動を実行に移すプラットフォームとして、アマゾンは使い勝手が良い。不正義を行っている企業があったとして、その企業が販売している製品に「☆1」の嵐をお見舞いすれば、売り上げも評判も下落させることは可能だろう。たくさんの製品が集まり、たくさんの利用者がいる環境だからこそ、他の用途にも転用が利くのである。

 こうした行動は意見表明の新しい形になるのだろうか? 機能不全を起こしているように見える選挙制度に変わって、社会を変えるメカニズムを持ちうるだろうか? もっと言えば、アマゾンは正義を実行するプラットフォームになれるだろうか? その詳細について、次回の記事で考察する。

【筆者略歴】

岡嶋裕史(おかじま・ゆうし) 中央大学国際情報学部開設準備室副室長。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「ビッグデータの罠」(新潮社)など。


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