【コラム】総裁選、この2、3週間がヤマ場

 かつて陸上競技におけるスタートの合図は「位置について、よーい、どん」が定番であった。慎重過ぎれば出遅れ、早過ぎればフライングとなった。自民党総裁選(9月20日予定)に挑む石破茂元幹事長の心境は、なかなか「どん」が聞こえず、待たされているようなものだろう。国会の会期が32日間も延長されたことで、緊張状態は極限に達している。

 石破氏は6月21日に国会が閉会になることを前提に、出馬表明と自著の出版で話題を集め、7月16日の自派の研修会で鬨(とき)の声を上げる段取りを組んでいた。だが、出馬表明のタイミングが狂っただけでなく、出版予定日の13日は金曜日で、クリスチャンの石破氏にとって皮肉なものとなる。記録的な豪雨災害によって研修会も中止となった。

 計算が狂ったという意味では、安倍晋三内閣の支持率回復もしかりである。安倍首相はモリカケ問題で失地を回復できないだろうと踏み、そこに石破氏は勝機を求めたが、今や多くの世論調査で支持率が不支持率を上回る。「他力本願で政権が取れるはずはない」とは、石破派中堅議員の冷ややかな言である。

 確かに世論調査によっては、石破氏に期待する声は小さくない。だが、安倍首相の支持率が下がっても、永田町における石破氏の人気が高まることはなかった。しばしば石破氏は「握った手の数しか票は出ない、歩いた数しか票は出ない」と若手議員に発破をかけるが、「なぜ彼はそれを永田町でしないのか」と首をかしげる議員は多い。

 石破氏はまた、「政治家は勇気と真心をもって真実を語れ」と豪語する。これは渡辺美智雄元副総理から教わった言葉だというが、石破氏が新聞紙面に載るのは、もっぱら政権批判をしたときである。だから永田町では「あの人は後ろから鉄砲を撃つ人」と警戒されているし、これが石破氏の支持が広がらない理由の一つだとされている。

 一方、一時は総裁三選に黄信号がともりかけた安倍首相だが、今や余裕綽々(しゃくしゃく)である。首相周辺からは「第1回投票で決めるだけではない。目指すのは圧勝だ」といった自信が満ちあふれる。それどころか、「選挙後、報復人事があるのは当然だ」「総裁選で石破を完全につぶす」との憎しみまで渦巻く。

 もちろん、まだ「どん」の合図は鳴っておらず、レースは始まっていない。石破氏の政権構想もまだ発表されていない。石破氏は田中角栄氏の「列島改造論」や竹下登氏の「ふるさと創生論」をほうふつとさせる構想をにおわすが、「どうせ自慢話と言い訳ばかりだろう」「肝心の経済政策は書かれていないのではないか」といった悲観的な予想もある。

 石破氏は総裁選の挑戦者である。現職が断然有利だとされているが、自民党史には挑戦者が勝った例もある。たとえ安倍内閣の支持率がV字回復しつつあっても、石破氏に多少の勝算はある。しかし、石破氏が積極的な情報発信を企てるこの2、3週間で待望論が一気に高まらなければ、幸か不幸か、レースが始まってすぐに勝敗は見えてくる。

(政治アナリスト 楠 拳太郎)


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