【甲子園―100回目の夏②】史上最強チームは「無敗の横浜」

 熱心な高校野球ファンの間で必ず議論になるのは「史上最強チームはどこか」というものだろう。1回目のコラムで書いたとおり、トータルで歴史を振り返れば中京大中京(愛知)がランキング1位に君臨している。

 では、チームとして最強を誇ったのはどこか? ファンそれぞれの好みや印象で違ってくるのは当然のこと。それを踏まえた上で私見を披露したいが、その前に「最強の系譜」をたどりたい。

 まずは和歌山中(現桐蔭、和歌山)の名が浮かぶ。第7回、第8回大会(1921、22年)で初めて連覇を果たした。強打のチームで、第7回大会では4試合で75点を奪っている。これはいまもなお破られていない1大会チーム最多得点である。

 中京大中京は中京商時代に「不滅の3連覇」を果たした。吉田正男投手がエースとして支え、競り合いでは無類の強さを発揮した。第19回大会(33年)の明石中(現明石、兵庫)との延長25回の戦いは球史に残る最長試合だった。

 余談だが「鉄腕投手」の吉田さんとは記者時代、甲子園球場で隣り合わせの席で仕事をする機会に恵まれ、よく昔の話を聞かせていただいた。夏の大会の過酷さ、マウンドでの孤独な闘いなどなど。いまは鬼籍に入られた。悔やんでも遅いが、もっとちゃんと系統立てて話を聞いておけばよかった。残念でならない。

 春夏連覇校も最強チーム候補に挙がるだろう。史上初めてこの快挙を達成した第44回大会(62年)の作新学院(栃木)は、春と夏は違う主戦投手で優勝したことで特筆される存在となった。第61回大会(79年)の箕島(和歌山)は星稜(石川)との延長18回の死闘を乗り越えた。この試合は記者席で見ていたが、奇跡のような2度の本塁打で息を吹き返した。「負けないチーム」のすごみを体感した。

 1987年のPL学園(大阪)は、3人の質の高い投手を擁するプロ野球顔負けの陣容を誇った。このチームを最強に推す意見は多いだろう。

 法政二(神奈川)と池田(徳島)も強かった。法政二は1960年夏と61年春の甲子園で連覇。前人未到の3季連続Vを懸けた第43回大会でライバルの浪商(現大体大浪商、大阪)に屈したが、米大リーグの野球を取り入れた当時としては画期的なチームだった。池田は、ご存じ蔦文也監督の育てた強力打線で、82年夏と83年春を制し、法政二の果たせなかった偉業に挑んだが、最後の夏は「KKコンビ」のPL学園に準決勝で敗れた。そこからPLは5季連続出場して優勝2回、準優勝2回、ベスト4が1回と見事な成績を収めている。このチームの印象も強烈だ。

 最後に、私が「最強チーム」として推したいのが、1998年に「平成の怪物」といわれた松坂大輔投手を擁して春夏連覇を果たした横浜(神奈川)である。このチームは公式戦で一度も負けなかった。新チームとなった秋の県大会から1年後の国体まで、44連勝をマークした。

 高校野球はトーナメント戦。無敗記録からみても最強といって差し支えないだろうが、記憶の面でもその強さを高校野球ファンの脳裏に焼き付けた。夏の第80回大会は準々決勝でPL学園との延長17回、9-7の激闘の後、準決勝の明徳義塾(高知)戦は6点差をひっくり返した。PL戦の疲労を考慮して先発を外れた松坂投手が終盤マウンドに立ち、異様な雰囲気の中で逆転劇に成功。決勝では松坂投手がノーヒットノーランの快投を演じて、連覇の物語を完成させた。

 何から何までドラマチックな大会の後、横浜の選手は虚脱感に陥ることなく、ともすれば真剣味の薄れがちな国体でも優勝を遂げた。チームには、高校野球の指導者として一時代を築いた渡辺元智前監督の信念が浸透していた。同監督は「どの試合も一生懸命やることこそ、教育そのもの。それが人生の勝利に結びつく」と語っている。人間形成に重きを置いた監督らしい言葉といえよう。

自作ノートの歴代優勝校一覧。出場校同様に春、夏を横に並べ、関連性が良く分かるようにした

【筆者略歴】

後藤英文(ごとう・ひでふみ) スポーツジャーナリスト。共同通信では初代スポーツ専門特派員としてニューヨークで勤務。MLBワールドシリーズやW杯サッカー、NFLスーパーボウルのほか夏冬の五輪などを取材。元びわこ成蹊スポーツ大学教授。


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